2/2ページ目
この記事を1ページ目から読む
成田はさらに、陰謀論系YouTuberの集客力の強さに触れ、「陰謀論的熱狂の土壌の中から、政治的な分断とか対決を象徴する新種のミュージシャンが出てくるかも」などと挑発する。すると椎名も「アメリカ左派の思想、例えばLGBTQみたいなものを今、日本はせっせとありがたがって輸入してますが、それは実は、我々にはもともとあったはず」と薄っぺらで参政党みたいなことを返すのだ。すると成田はしめたもので、「土地と不動産が、日本の相続税を払わなくていい外国の方に流れて」などと、どんどん排外主義のほうに話を進めていく。
おだてつつ不安を煽る、まるで詐欺師の口ぶり。この記事は、政治や世界情勢について特に考えていないがゆえに、とても素朴に「日本が好きじゃダメなの? なんで国旗上げたら叩かれるの?」レベルの考えにとどまる椎名林檎を焚き付け、立派な排外主義者に育てようとする恐怖のドキュメンタリーである。しかもおそらく成田は、トランプがイランを“just for fun(遊び感覚)”で攻撃しよう、と言ったのと同様、これをjust for funでやっている。
成田は上野千鶴子との対談で、「対立を煽る論点や語り口やパフォーマンスも必要悪かもしれないと感じている」と白状し、そういう意味でトランプへの賛意すら表している。彼は故意に第三者同士の対立を煽り、そこで起こる事態に何らかの可能性を見出すタイプの極めて無責任な人間なのだ。
(「週刊文春」2026年4月2日号を加筆・修正)
