世間を騒がせた幅広いトピックから聞き捨てならない「言葉尻」を拾い上げ、独自の視点で深く考察する能町みね子さんの「週刊文春」人気コラム「言葉尻とらえ隊」。この連載をまとめた文庫オリジナルの新刊『余裕がない人』から、著者自身が選んだ3本を紹介します!(全3回の1回目)
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元Sexy Zoneのマリウス葉は、SPURで『マリウス葉の一歩ずつ進もう』という連載をやっている。これを「元アイドルのやわらかエッセイ」かと思って読むと、意外な重厚さに驚く。
例えば最新回ではNetflixのヒットドラマ『アドレセンス』を例に、フェミニズムへのバックラッシュについて多弁に語っているのだ。彼は、「トランプが大統領になれたのもマノスフィア(男性性を称揚するムーブメント)のインフルエンサーの影響力のおかげだと言う人もいます」と、踏み込んで語る。こういうことが言える日本の(元)芸能人もいるんだねえ。
こういうのって男性への影響力が強い芸能人が言ったらなおいいのに、なんて思いながらテレビを見ると、今日は小泉進次郎が田んぼの中にイスを出して南相馬の農家の人と語り合っている。相変わらず絵作りが過剰だなあと思いつつ、そういえば進次郎って表面的にはマッチョなところが少ないな、と思う。
彼は最近の調査で“次期首相”候補のトップ。それはもちろん、テレビでの単純接触効果や、単に若くてビジュがいいという要因はあると思う。しかし、最近の彼を見ていると、しっかり人格として支持されつつある気がする。「進次郎構文」さえも含めて。
進次郎は、田んぼの中で話を聞き(というか、農家の方の発言よりも進次郎が力強く何か言い切る部分ばかりニュースで流れるのだが)、「国会敷地内に車を停めて、牛丼(もちろん紅生姜オン)。今から本会議、行ってきます」とポストして車中のあわただしい昼食の動画をあげ、時には食事しながら電話している動画をあげ、忙しいぜ、働いてるぜ、と全力で主張する。いつも決め顔で、アピールはとても露骨である。
なのに、マッチョ性の稀薄さと、例の構文で培われたなんとなくバカっぽい空気にふんわり包まれ、かわいらしささえ漂う。紅生姜がどうのと書くのも、庶民派アピールというより「本当はボンボンだけど、がんばって庶民派アピールしてる僕」という内側まであえて提示しているように見える。
