世間を騒がせた幅広いトピックから聞き捨てならない「言葉尻」を拾い上げ、独自の視点で深く考察する能町みね子さんの「週刊文春」人気コラム「言葉尻とらえ隊」。この連載をまとめた文庫オリジナルの新刊『余裕がない人』から、著者自身が選んだ3本を紹介します!(全3回の3回目)
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椎名林檎がインタビュー(文藝春秋PLUSのヤフー転載記事)でまた日の丸や旭日旗について語っており、世間がザワザワしていた。
以前この連載で触れたとおり、椎名は「日本共産党」と書かれた拡声器を使ったり、愛車に「ヒトラー」と名づけたり、一貫性なんかなく「なんか過激でカッコいい」のが好きなだけの人。同世代として彼女のデビューを衝撃をもって受け止めた私としては言葉を聞くたびガッカリなのだ。
しかもこの記事、インタビュアーが「高齢者は集団自決を」でおなじみの成田悠輔なので、大変厄介だ。
成田は椎名の「NIPPON」という曲を例に、「日本や日の丸を掲げるのは勇気がいることだったんじゃないでしょうか」と問いかける。
なぜ勇気が要るのか、その背景には言及しない。日の丸を出したら変な人に絡まれるよね? というほうに彼女をいざなう。
彼女は、成田の意図を理解しようとしつつ、「『ニッポン』って読ませていることが『大日本』みたいなイメージを喚起するとか言う方も当時はいらっしゃいましたね」と答え、ニホンよりニッポンのほうがリズミカルでいいと思っただけ、などと言う。衝撃的にピント外れである。何も分かってない感じ。
すると成田は「粘着されますよね」「日の丸や旭日旗のイメージを使うと、左右から叩かれて」……つまり、政治的な人に絡まれてもっと困っていたはずだ、と彼女を詰める。こういう理由で旭日旗は非難されるが、それでも私は意図があって使ったのだという話になるなら分かるが、彼は「旭日旗とか使うとヤバい奴が絡んできて困るよね」という幼稚な方向にひたすら舵を切る。
