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オリックス・岸田護 ファンの思いとともに来季へつながる復活のシーズン

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/10/13

そして初登板 “護る男”が9回を締めた

 春先はウエスタン・リーグを戦場に投げていましたが、素晴らしい安定感を見せて昇格を果たし、今シーズンの1軍初登板は、交流戦真っ只中の6月13日・京セラドーム大阪。カープの強力打線を相手に、この日出場選手登録された岸田投手は、9回に5番手としてマウンドに上がり、1安打1四球を出したものの無失点でしのぎ、試合を締めました。「緊張しました。やっと開幕しましたね。出ていったらお客さんがワーッと言ってくれて嬉しかったな……」と、笑みを浮かべて語ったコメントの文字を見ながら、ホッとしたのは言うまでもありません。

 そして、頑張って投げるその姿をスタンドから見つめ、胸にグッと来るものを堪えながら今シーズンも声援を送っていた人たちがいます。

「TEAM KISHIDA 18 岸田会」

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 プロ野球選手を応援する組織としては後援会があり、プロ入り後すぐに発足するケースが多いのですが、こちらは、岸田投手を息子のように思う一人の男性の「一緒に応援して欲しい」という一言から始まり、4年前に結成された私設の応援会。自然発生的で緩やかなつながりの人たちによるものです。

 メンバーは、シーズン前に岸田投手とふれあいのひとときを設け、そこで、みんなのシンボルになるようなアイテムを完成させました。

応援のシンボルアイテム

 背番号の周りに、参加した51人のメンバーが願いを込めて白星を張り付けた応援ユニフォーム。星のひとつは、岸田投手本人がその手で貼り付けました。スタジアムいっぱいに響く声で「岸田護!!」とコールされるとマウンドに上がり、スコアボードの方に向いて股関節を伸ばすおなじみの動作。それを観ながら、メンバーはスタンドで「みんなの☆ユニ」と名付けたそのユニフォームを掲げて声援を送るのでした。「頑張れ! マモさん!!」と。

 スタンドのファンとプレーヤーがひとつになる瞬間。岸田会のメンバーは「身体つきが、今年は明らかに大きくなっていて、ここ数年では一番状態が良いのではないでしょうか。マウンドに上がるとドキドキします。家族を想う気持ちですね」と話します。

 交流戦後はファーム暮らしに戻りますが、8月に1軍へ帰ったあとも岸田投手は快投を続け、今シーズンは17試合に登板して、投球回は15回1/3。防御率は2.35。奪三振率8.22という成績を残しました。決して派手な数字ではありませんが、投げた225の球数一つひとつに思いを込めた、堅実で意義深い足跡。

 シーズン終盤のある試合。チームが12点を失って敗戦するなか、ただ一人失点のなかった岸田投手について、福良監督は「岸田の姿を見て(ナインが)どう思うかですね」とコメントしました。ベテランの頑張りを称えたひとこと。それは、チームにとって欠くことのできない存在であることの証左でもあります。

 こうしたなか、岸田投手が来シーズンも現役を続行する見込みであることが分かりました。スポーツ紙は球団幹部のコメントとして「今季は戦力として、しっかりと結果を残してくれている」と紹介し、そうした評価から、現役続行へ意欲を示す本人と来シーズンも契約を結ぶ方針を固めていることを伝えています。

 汗かきで、マウンド上では迸る汗を振り払うかのように投げ込む岸田投手。抜群の安定感でブルペンを引っぱる一方、謙虚な姿勢と柔らかい人柄で、若手中心の救援陣をまとめる投手最年長の存在感は、なお輝きを放つでしょう。

 岸田会の世話役を務める女性は「今年は厳しい場面での起用が多く、しんどかったと思います。ここぞの時の岸田護。これは期待の表れだと確信しました。現役続行の報道にホッとすると同時に、怪我だけはしないで欲しいと心から願うばかりです。そして、来年はシーズンを通して(マウンドに上がる姿を観て)ドキドキしていたいですね」と声援を送ります。

 後輩たちから「お父さん」と慕われ、ファンからも愛される岸田投手の野球人生は、まだ続きます。

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