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「カープファンはどう思われているのか」に対してヤクルトファンが思ったこと

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/10/21

カープファンは嫌われているのか?

「努めて冷静に書こう」と意識しているため、まるで他人事のような書き方をしているけれど、僕にとってもこれは決して他人事ではないことは重々承知している。この文春野球でも書いたけれど、僕自身も今年の4月、マツダスタジアム・ビジターパフォーマンス席での顛末をツイートし、それを原稿にしたことで、さまざまな意見を頂戴し、心身ともに疲弊する事態に見舞われた。できることならば、あまり触れたくない話題でもある。

 改めて、「カープファンは他のチームのファンからどう思われているのだろうか」という、杉作さんの問いに戻る。そして、本文中にあった「他のチームのファンから嫌われているのではないか」という問いを考える。答えづらいことではあるけれども、「イエス」と答えざるを得ない一面もあるとは思う。でも、それは何度も繰り返すように「一部の過激な、過剰なファン」の目に余る行為についてだけだ。当然のことながら、カープファン全員が嫌われているはずがあるわけがない。そしてこれは、どの球団にだって当てはまる問いであり、答えなのだ。巨人ファンだって、阪神ファンだって、中日ファンだって、横浜ファンだって、もちろんヤクルトファンだって、パ・リーグ各チームのファンだって、他者に迷惑をかける振る舞いをすれば、他チームのファンに嫌われることもあるだろう。

 たびたびFさんの話題で恐縮だけれど、Fさんがゴミを片づけるから「すべてのヤクルトファンのマナーは最高だ」と言えないように、一部の過激なファンの行為によって、「だから○○ファンはダメなんだ」とは言い切れないのだ。つまり、FさんはFさんという「個人」であって、「ファン」とひとくくりで語られる存在ではないのだ。「ファン」とは「個」の総体であり、「個」のみで、「総体」を語ることはナンセンスなのだ。……何をオレは、当たり前のことを偉そうに力説しているのだろう。

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野球は相手があってはじめて成立する

「では、どうすればいいのか?」と問われれば、僕にも明快な答えはない。現実的な対策としては、無用なトラブルを避けるべく、球場警備員がさらに警備を強化することが大切なのだと思う。しかし、それは根本的な解決策にはならない。やっぱり「野球は相手のチームがあってはじめて成立するスポーツである」ということ、「お互いにお互いを尊重して思いやる」ということ、つまりは個々の心のあり方が問われているのだと思う。そしてこれは、杉作さんとまったくの同意見なのだ。

 自分なりに考えに考え抜いた結果、「お互いを尊重しながら、互いに互いを思いやる」という性善説に基づいた精神論しか導き出せないのがもどかしい。けれども、やっぱり、それ以外の解答が見つからないのだ。杉作さんの原稿を読んで、「及び腰だな」と感じた思いは、そのままブーメランとなって、自分に突き刺さる。

 残念なことだけれど、おそらくこれからもファン同士のトラブルは起こるだろう。日本全体に不寛容な空気が満ちていることと関係しているのかどうか、僕にはわからないけれども、明らかにここ数年のスタジアムを取り巻く環境は、よくも悪くも変容している。ファンサービスは充実し、球場の設備も格段に向上した。僕が子どもだった頃のように、観客席でタバコを吸いながら観戦する客は、今では皆無だ。かつて神宮では「貸し座布団サービス」があったが、あの頃は試合中に座布団が乱舞することもあった。

 観客のマナーは向上している。公衆の面前での振る舞いも、モラルも格段に向上している。でも、その一方ではファン同士が殺伐としてきているのも現実だ。これは僕の体感なので、「そんなことはないよ」とおっしゃる人もいるだろう。でも、せっかくの観戦の際に、ときおり感じる居心地の悪さや、こうした原稿を書く際の緊張感は間違いなく大きくなっている。何から何まで杉作さんの尻馬に乗るような文章と結論で恐縮だけれど、これが僕だけの杞憂であればいいと思う。フワッとした結論で申し訳ありません。最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

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