「最近の子は教科書すら満足に読めない」「スマホの普及で若者の読解力が下がっている」――こうした“若者の読書力低下論”が蔓延している。
しかし国際調査で日本の読解力は世界トップクラスであり、小中学生の読書冊数も過去最高水準だ。なぜ存在しない「低下」が叫ばれ、世間の不安を煽る話題となったのか。ジャーナリストの飯田一史氏の新刊『「若者の読解力低下」というウソ』(集英社インターナショナル)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目)
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「最近の子は教科書も読めない」
そんなことが言われている。
「うちの子は大丈夫なのか」と思っている保護者もいるだろう。
しかし、ほんとうに不安を感じるべき現状なのだろうか。
読解力なんかなくていい!……というひとはいない。
むしろ「子どもの読解力を上げたい」「最近の若者は読解力が下がっていてけしからん」などと思っているひとのほうが多い。
私自身、小学生の子を持つ親として、子どもの国語の点数がよいにこしたことはないと思っている。また、自分がソーシャルメディアに投稿した文章や書いた本への反応を見ていると、時折「どこをどう読めばそうなるんだろう?」と感じることがある。「まともに読めてないな」と。
しかし、実のところ多くのひとたちは、ほんの四半世紀前まで、いや、十数年前まで「読解力」についてほとんど関心を払っていなかった。グラフ(図A)を見てもらいたい。
「読解力」がタイトルに含まれる主要全国紙(朝日、読売、毎日、産経)の記事数を新聞・雑誌記事検索サービスG-Searchで調べると、1990年代までは0~2件。「世論形成を左右する」と言われてきた新聞メディアは、読解力についてほとんど報じていなかった。
もちろん、教育界、受験産業では、国語や英語に絡めて読解が論じられてきた。国語教育学では、文部科学省が定める「学校の教育課程(カリキュラム)を作るときの全国共通の基準」である学習指導要領と教育現場の知見、各種の理論・研究を踏まえながら「読解指導」と「読書指導」を分けて議論・実践してきた歴史がある。
全国紙が取り上げる話題ではなかった
だがその世界の外側では「読解力をどうやって上げるのか」といった話はおおごとにされてこなかった。全国紙が取り上げる話題ではなかったのである。
ところが2000年代に入ってから増え始め、2010年代初頭にピークを迎える。2000年代に入ってから記事が増えた理由は何だろうか?

