2000年代以降、マスコミが大々的に取り上げるようになった「若者の読解力低下」。だが、PISAの順位低下をきっかけに煽られたこの“危機感”の裏で、大手新聞社や教育事業者が繰り広げていたビジネスとは――。
世間の不安を煽り、特定の検定や教材へ誘導する「読解力ビジネス」の真実を、ジャーナリストの飯田一史氏の新刊『「若者の読解力低下」というウソ』(集英社インターナショナル)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目)
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マスコミが「読解力低下」を謳った契機
戦後教育史をざっとふりかえると、1960年代以降、小・中・高における学習量が多すぎるとする「詰め込み教育」批判を受けてから文部省(現・文部科学省)の教育政策の見直しが始まり、1990年代末には教科書のカリキュラム削減の方針が打ち出される(「ゆとり教育」)。
これに対して1999年から西村和雄ほか編『分数ができない大学生』(東洋経済新報社)をはじめとする「学力低下」論が沸騰し、教育業界を越えて連日テレビでも取り上げられるほどの騒動になった。
1999年から2001年ごろまで、算数・数学の能力や学習時間、学習意欲の低下、教育格差がさかんに論じられた。しかし実はこの時期には国語、読解はそれほど取り上げられていなかった。
それが変わるのは、学力を「国際比較」する学習到達度調査PISAが2000年に始まり、2003年に日本のランキングが下がってからだ(図B)。
もともとはOECD加盟国の15歳を対象にして始まり、その後、途上国や中進国にも受検参加国を拡大していったPISAでは、数学、科学、読解(Reading)のリテラシーがテストの対象となった。このテストで測定されたReading Literacyが「読解力」と翻訳されたのである。
初回の2000年調査で日本は数学1位、科学2位、読解8位と読解だけやや低い順位だった。さらには、アンケート結果から日本の子どもが先進国のなかでもっとも本を読まない部類に入っていたことが判明する。
そしてPISA2003年調査の結果が2004年に発表されて読解の順位がさらに下がると大騒ぎとなり、「PISAショック」と呼ばれた。このころから、マスコミは「読解力」について大々的に報じ始める。

