七輪で火をおこし、やかんで湯を沸かしてカップラーメンを…
主は、廃材置き場から材料を運んできては黙々とトンカチで釘を打ちつけています。カン、カン、カン……。その音が、冒険遊び場全体のBGMになっています。彼の佇まいには「親方」と呼びたくなるような落ち着きと貫禄があります。あるいは一国一城の主の風格といってもいいかもしれません。
午前中の仕事を終えると彼は、七輪コーナーに行き、手際よく火を起こし、ベコベコに凹んだやかんで湯を沸かし、カップラーメンをすすります。ただのカップラーメンですが、彼が食べているとものすごくうまそうに見えます。
彼が家路についたあとも、夕方の風にたなびく赤い旗が「俺はここにいる!」と宣言しているようでした。
国分寺市プレイステーションから遠いところに住んでいる子どもたちにとって不平等にならないようにと、国分寺市内の10カ所の公園で、それぞれ週一回、冒険遊び場の会が出張の冒険遊び場を開催しています。これも市からの委託事業です。
一般市民にもプレイリーダー的な気持ちや視点をもってもらうために、年に2回は、市内全体でプレイリーダー講習会を開いています。そういう視点をもったひとが地域に散らばっていくと、地域全体の子どもを見る目も違ってくるとNPOの代表は言います。
町中の大人がプレイリーダーのような子どもとのかかわり方を身につけたら、子どもたちはあらゆる場面で遊び育つことができるようになるはずです。子どもたちが日々の生活のなかで得る体験とそこからの学びがどんどん豊かになっていくでしょう。
2023年にこども基本法が施行され、いま、各自治体では放課後の居場所づくりが大きなテーマになっています。しかし、居場所づくりとは、ただハコモノを用意するという意味ではありません。
場所は少々古くてボロくとも、そこに居る大人たちがプレイリーダーのようなマインドセットを携えていれば、子どもたち自らが、さきほどの秘密基地のように、大人の想像を絶するほど居心地の良い場所をつくるのではないでしょうか。子どもたちの群れが、自分たちのなわばりを再生していくはずです。
ずいぶんと前から「ハードよりソフトにお金をかける時代」と言われていますが、子どもの居場所づくりも同じです。立派な設備や遊具を備えたハコモノを新たにつくるよりも大切なのは、プレイリーダーのような知識と技術を学んだ大人の頭数を増やすことだと思います。そのために予算をつけることこそ、本当の意味での子どもの居場所づくりにつながるのです。


