「みなさんのご健勝とですね、阪神タイガースの日本シリーズへの挑戦に祈願をしまして、乾杯したいと思います!」
阪神がクライマックスシリーズ第3戦でDeNA相手に0-4で大敗を喫することになる10月16日の試合開始の少し前の午後4時半ごろ、JR大阪駅を眼下に見据えるホテルグランヴィア大阪21階の宴会場葵の間では、「三国会」と題された会合が開かれていた。
”三国(みくに)”とは、大阪の最大インフラ企業である関西電力が擁する「電力システム技術センター」の最寄り駅・阪急電鉄三国駅を指す。
集まったのはスーツに身を包んだ10名ほどの男たち。初老の男性らは歴代のセンター所長ら関電OB。そして、その合間を縫い、忙しそうに接待に応じるのは子会社である関西電力送配電の現役社員である。 リラックスしたムードの中、それぞれが席に座し、ビールやワインを手に、久方ぶりの邂逅に笑みを浮かべている。
「引退しましてもね、会社の中のことわからないんで、毎年最新の情報提供していただいて、どうもありがとうございます」
OBと見られる出席者の一人がこう感謝の意を表明すると、乾杯の声とともに拍手が響いた。一見、何の変哲もない親睦会である。
上座中央に座り、時折笑みを浮かべる男性が、今関西電力が約19億円の損害賠償を求めている元会長の八木誠氏であることを除けばーー。
19億円の損害賠償請求訴訟
関西電力が元役員らを訴えている損害賠償請求訴訟は現在も大阪地裁で審理が続いている。きっかけは、2019年9月の共同通信社によるスクープだった。
「同社の役員ら(当時)が、原発のある高浜町の元助役である故人から小判などの金品を受領していたことが税務調査で発覚したと報じたのです。この報道で、多くの幹部が退任に追い込まれた。中でも経営トップとして、責任を最も重く問われたのが八木氏でした」(社会部記者)
自身も金品を受領し、この元助役の関連企業を事実上優遇していた一方で、取締役会への報告を怠るなどしていた。報道直後八木氏は会見でまさかの“続投表明”をし、世論から猛烈な批判を浴び、会長の座を追われた。
「その後、会社に多額の損害を与えたとして、会社法違反(特別背任)容疑などで市民団体や株主らから刑事告発されたものの、大阪地検特捜部により嫌疑不十分で不起訴になった。株主側による試算では、信用低下による株価の下落や元顔役への工事の不正発注などによって会社に与えた損害は90億円は下らないとした。当然不起訴で株主らの怒りが収まるはずはなく、関電は民事で損害賠償請求するよう再三求められ、重い腰をあげたのです」(同前)
外部の弁護士らによる調査を経て、2020年6月、八木氏ら旧経営陣が大阪地裁に提訴された。原告は関西電力。だが、株主側の試算に反して同社が求めた損害賠償額は約19億円と、試算の5分の1ほどだった。
「最終的に、先んじて行われていた株主代表訴訟と関西電力による訴訟が併合されることになったのです。八木氏らは『金品は預かっただけで善管注意義務違反にはあたらない』として真っ向から反論。訴えの棄却を求め、バチバチの法廷闘争が行われていた。裁判はこの9月に結審し、来年3月には判決が控えています」(同前)
