「高校時代は女子にモテていて、みんなで集団デートをして遊んでいました」

 ノーベル化学賞を受賞した東京理科大の硤(そ)合(あい)憲(けん)三(そう)名誉教授(76)について語るのは、高校の同級生で、現在、小樽商科大名誉教授を務める江口修氏だ。

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生命誕生の謎を解き明かすための大きな一歩「硤合反応」

 全国紙記者が語る。

「仏サクレー大のアンリ・カガン名誉教授との共同受賞で、日本人としては昨年の北川進・京大特別教授に続いて2年連続。通算10人目の化学賞となりました」

 受賞理由とされたのは、「不斉有機合成における非線形効果と自己触媒作用の発見」。……と言われても、いったいどんな研究?

買い物中に受賞の電話を受けた硤合氏

「最も大きな功績は、生命誕生の謎を解き明かすための大きな一歩となる『硤合反応』の開発です」

 そう語るのは、15年にわたり共同研究を行った早大の柴田高範教授だ。

 生物の中にあるアミノ酸などの化学物質には、人間の右手と左手のように、形はソックリなのにお互いに鏡映しになっている二つの型がある。だが生物の体内には、通常、ほぼ一つの型しか存在しない。それが化学界にとって1世紀以上にわたる大きな謎だった。

「硤合先生は、最初に使う触媒の作用でわずかに数が多くなった方の型が、自ら反応を速めて自己増殖する現象を発見しました。それが硤合反応で、1世紀以上の大きな謎を解き明かす足がかりとなる可能性をもつ基礎研究です」(同前)

高校の同級生・江口氏が見た硤合氏の意志の強さ

「硤合」は全国に30人ほどしかいない珍名字で、出身は広島県安芸郡だ。「憲三」は、5月3日の憲法記念日に生まれたことから、教員だった父親が名付けた。

 小学校から高校まで広島大学附属に通った硤合氏。中高の同級生で、国際復興開発銀行の日本代表理事も務めた式部透氏が明かす。

「授業中に先生の顔をじっと見て、微動だにせず話を聞いていたのが印象的でした。ガリ勉タイプではないのに学年トップの成績。バスケ部の活動にもとことん取り組んで、卒業までやり切っていました」

 前出の江口氏は硤合氏の意志の強さを記憶している。

「頑固なところもあって、古文の先生が『吉田兼好なんていい加減な男だ』と言ったら、『それは違うんじゃないですか』と真っ向から反論。先生は若くてチャラいタイプでしたから、カチンときたんでしょうね」