この映画で、日常を描くことに目覚めた

『星の教室』で主人公の潤間さやかを演じた桜田ひよりは、映画の制作統括をつとめる東映の遠藤茂行プロデューサーからの推薦だった。

「今回は静かな映画なので、主人公には喜怒哀楽が前面に出るのではなく、むしろ抑えめの演技を求めていました。他の女優も推薦されましたが、演技力を重視して桜田さんに決めました」

さやかを演じる桜田ひより(左)。その哀しい過去をたたえる表情のリアリティが、主演抜擢のきっかけだったという。 ©2026映画「星の教室」製作委員会

 今回、映画の重要なモチーフとなっているのが、坂本九が歌った、永六輔&いずみたくコンビの名曲「見上げてごらん夜の星を」。永といずみによる同名ミュージカル(1960年)の劇中主題歌として作られた曲だ。

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 そのミュージカルの内容は、集団就職の時代に、夜間高校に通う学生たちの青春像を描いたもの。その後も幾度となく再演され、63年には映画化もされている。勤労学生たちの喜びと悲しみ、明日への希望を歌ったこの曲も、日本のスタンダードナンバーとして現在まで親しまれており、『星の教室』の原作にも組み込まれている。

夜間中学に通う生徒を演じる中尾ミエ(左)、浅野温子(右)といった、役者陣の演技にも注目。 ©2026映画「星の教室」製作委員会

 今回、それを主題歌として歌っているのは、新しい学校のリーダーズ。原曲に忠実なアレンジが印象的だ。

「原曲に近いかたちでありながら、今の観客を感動させる主題歌がほしかったんです。だから、歌い手は新しい学校のリーダーズですが、曲としてはアレンジを最小限に、昔のスタイルのままシンプルに歌ってもらうことにこだわりたかったんです」

 とはいえ、『星の教室』は、それ以外の劇中の音楽や大仰な効果音がほとんどない、静かな映画である。それゆえ、達者な俳優陣の演技、彼らの発する言葉が深く染み込んでくる。これまで角川春樹が製作してきた映画とは、だいぶトーンが異なる。

「私は今回、初めて見せ場のない映画を作ったんですよ。特別な世界ではなく、日常を描きたい。あざとく作らないことを、最初からテーマにしていました。私は今回、日常ドラマに目覚めましたね。日常を描くことで、観客の琴線に触れる映画を作れるか、ということに、私は今、一番興味があるんですよ」