外資系コンサルティング会社に勤務しながら、芸能事務所に所属してアイドルを目指すトランス女性、さらしな叶夏さん(22)。インフルエンサーとしても活動する彼女は、性別適合手術を受けることなく、戸籍上の性別を男性から女性へと変更した。驚くべきは、その裁判を弁護士に頼らず、チャットGPTなどを駆使して自ら申し立て、わずか1600円の費用で逆転勝訴を勝ち取ったことである。
チャットGPTを駆使して裁判を申し立て逆転勝訴
さらしなさんが戸籍上の性別を女性に変更したのは、2024年4月16日のことだ。彼女は性別適合手術を受けていない。3年前の最高裁判決で性別変更の要件から「生殖機能がないこと」が削除され、手術は必須ではなくなった。さらに、2024年には外性器の状態が女性的であれば性別変更が認められるという判例も出ていた。
さらしなさんは裁判で、女性ホルモンを継続的に打ち続けることで生殖機能が弱まっている点を主張。ホルモン治療によって男性器が縮小・機能低下していることを医学的に証明した。「手術を受ける以外の、医療でできる範囲では限界です」と訴え、生殖機能がほとんどないことも明らかにした。
裁判は、まず東京家庭裁判所に申し立てた。驚くべきことに、彼女は弁護士をつけず、チャットGPTなどを駆使してすべて自分一人で手続きを進めたという。一審では敗訴したが、東京高等裁判所に控訴し、逆転勝訴を果たした。
裁判費用は、収入印紙代のみ。高裁までにかかった費用は合計1600円だった。「最高裁まで行く覚悟はあったので、高裁までは自力で戦って、最高裁に上がるときには弁護士をつけようと考えていました」と彼女は語る。性別変更が認められた瞬間は、「人生で一番、嬉し泣きしました」というほどの喜びだった。
性別変更に先立ち、名前も裁判を起こして変更している。こちらは、大学入学時から女性名を使用していた実績を在学証明書などで証明し、2週間ほどで簡単に認められたそうだ。
まだ名前も性別も戸籍上は男性だった時期に行った就職活動では、男性名でエントリーシートを提出しつつ、写真は女性的な雰囲気のものを使用した。それでも面接で何かを言われることはなく、むしろ「LGBTQフレンドリーだから」という志望動機が喜ばれたという。大手20社ほど受けて14社から内定を獲得し、現在は外資系コンサルティング会社で働いている。
入社後に性別が女性に変わったことで、最も大きな変化はホルモン治療が保険適用になったことだった。3割負担になり、経済的な助けになっている。
しかし、彼女の歩んできた道は決して平坦なものではなかった。大学4年生の時に韓国で受けた二重の切開手術は、これまでで最もハードな経験だったと振り返る。「『ゾリッ』という切っている感覚がわかるし、なにより痛い。さらに出血を止めるために電気メスを当てられると、焼肉の匂いがしてくるんです」。麻酔を強くしてほしいと韓国語で伝えられず、ひたすら耐えるしかなかったという。
家族との間にも葛藤があった。大学2年生で初めて帰省する前、「見た目も女の子っぽくなっているんだけど、帰省してもいいですか?」と尋ねると、「男の子っぽい格好で帰ってくるならいいよ」と条件をつけられた。空港で再会すると、あまりの女性的な姿に「かわいすぎる」と言われ、人に見られないようにと黒い布で顔を隠され、車に乗せられた。「まるで犯罪者みたいな扱い」だったと彼女は語る。
現在、彼女は性別適合手術を受けるかどうかで悩んでいる。タイでの質の高い手術は1年半待ちで費用も500万円ほどかかり、身体への負担も大きい。一方で、アイドル活動は性別の問題で売り出しにくいという現実にも直面している。SNSでは「かわいい」という声とともに、セクハラ発言や「女性スペースに入ってくるな」といったアンチからの声も届く。
彼女は、トランスジェンダーの経験談やロールモデルが社会に少ないと感じている。「だからこそ私が発信することでより理解が深まればいいなと思っています」。法的な性別変更を勝ち取った今も、彼女の挑戦は続いている。
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