“見えない攻撃”は加速している。GMOなどの日本企業を狙ったサイバー攻撃によって大量の個人情報が流出。手口は巧妙化し、被害が甚大なものとなっている。2026年10月には、サイバー攻撃に中国系のツール「ARTEX(アルテックス)」が使われていることも明らかとなった。

 こうした事態をいち早く見通し、警鐘を鳴らしていたのが、国家安全保障局長を務めた北村滋氏(69)だ。『見えない戦争 インテリジェンス・勢力圏・経済安全保障の地政学』(文春新書)を上梓した北村氏が、「週刊文春」の取材に明かした国家を背景とするサイバー工作・認知戦の実態とは――。(初出:「週刊文春」2026年6月25日号)

経済安全保障政策を推進してきた北村氏

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「“見えない”という意味では、経済安全保障の重要性が一層高まってきています。例えば、デリスキング(特定の国や地域への過度な依存を避け、リスクを低減する戦略)の観点からサプライチェーンの多角化などが求められる。また、M&Aの問題も避けては通れません。特に中小企業の場合、最先端の技術を持っていながら、株式市場ではその技術やのれんなどの無形資産が低く評価されがちで、懸念国(安全保障上のリスクが高い国家)の企業に買収されようとするケースも出てきた。さらに、開発など企業の機密分野においては、適切な人材配置と、厳格な契約で対応していく必要がある。まさに、企業自身のインテリジェンス能力が問われる時代なのです」

『見えない戦争』はビジネスエリート必読の1冊

 さらに、スマートフォンが浸透した私たちの生活でも“見えない領域”への攻撃は始まっている。

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「ロシアによるウクライナ侵略はひとたび安全保障上の危機が勃発するや、スマホがサイバー戦の最前線の一部となることを浮き彫りにしました。侵略直前の22年2月中旬以降、日本国内のウェブサイトに対するサイバー攻撃は、直近3カ月平均と比べて最大25倍に増加したのです。とりわけ2月以降、『エモテット』と呼ばれるマルウェア(悪意あるソフトウェア)が検知される事例が爆発的に増えました」

 スマホは大多数の国民が常時持ち歩き、かつ、ネットワークに繋がっているという特性を持つ。このうえなく便利な分、安全保障上のリスク要因となる可能性も極めて高いという。