「戦争の勝敗や国家間の対立を左右するのも、民間企業の経営や私たちの生活に打撃を与えるのも、“見えない領域”なんです」
週刊文春の取材にそう語るのは、6月19日に『見えない戦争 インテリジェンス・勢力圏・経済安全保障の地政学』(文春新書)を上梓する元国家安全保障局長の北村滋氏(69)だ。
北村氏と言えば、第二次安倍政権などで、内閣情報官や国家安全保障局長を歴任。長年、情報の収集・分析を統括してきた日本最強の“インテリジェンス・マスター”として知られ、現在も国内外の要人と幅広いパイプを持っている。その北村氏が世界情勢やビジネスの最前線を見通すにあたり、キーワードに掲げるのが“見えない戦争”だ。
「戦争とは火力戦闘のようにキネティック(運動的・物理的)なものと思われていますが、近年はインテリジェンス活動やサイバー分野、レーダー探知に欠かせない電磁波領域など“見えない領域”の重要度が死活的に高まっています」
現実の戦争においても、それは如実に表れているという。
「例えば、兵力で劣るウクライナがロシアに対し、予想以上に善戦したのは、米国がインテリジェンス分野で支援していた影響が大きい。米国は開戦4カ月前の21年10月時点で、ロシアが北・東・南の3方面から同時侵攻する作戦を把握していました。CIA長官が22年1月にゼレンスキー大統領と会談した際、ロシア側の作戦の詳細を伝えたと見られます。今年1月のベネズエラへの攻撃においても、相手の基幹システムのサプライチェーンをインテリジェンスの力で把握し、相手に脅威を与える戦術が使われたとされる。電磁戦では、指揮命令を受けず、自律的に攻撃できるAI兵器が活用されつつあります」
トランプ氏と国家安全保障戦略
では、今年2月末に始まった米国とイスラエルによる大規模なイラン攻撃についてはどう見ているのか。
「最高指導者ハメネイ師の殺害など攻撃自体は成功を収めたと言えます。ただ、軍事力で劣るイラン側に非対称戦に持ち込まれ、ホルムズ海峡を独自に開放できていないのは、米国にとっては誤算でしょう。実はホルムズ海峡には、香川県の面積に近いゲシュム島をはじめ、大小多くの島が存在する。しかも、それぞれがイラン革命防衛隊によって武装化、地下化されています。それらを攻略するには、多大な人的損耗が避けられない。だからこそ、トランプ大統領は今、なるべく早く決着をつけたいと考えているはずです」
そのトランプ氏の外交・安全保障政策には一貫性がないと疑問視されてきた。だが、北村氏の見方は違う。
《一体、北村氏はトランプ氏の外交をどのように分析しているのか。また、民間企業を襲うサイバー攻撃や、中国が仕掛ける認知戦とはどのようなものか。“インテリジェンス・マスター”による徹底解説は、現在配信中の「週刊文春 電子版」および6月18日(木)発売の「週刊文春」で読むことができる》


