イスラエルと共にイラン戦争を始めたトランプ大統領を、名だたる大物MAGA(※)インフルエンサーたちが一斉にバッシングし、MAGA離れが起きている。いわく、イランへの攻撃は「狂っている」、アメリカ国民は「裏切られた」、ゆえに「もはや自分をMAGAとは呼ばない」。さらには「お前らは病んだ嘘つきの集まりだ」といった罵倒まで飛び出した。(寄稿:堂本かおる。全2回の1回目/続きを読む)

※MAGA=トランプ米大統領が掲げる政治スローガン「米国を再び偉大に(Make America Great Again)」であり、トランプ氏の熱狂的な支持層の意味も持つ

米時間3月19日、ホワイトハウスで日本の高市早苗首相と会談したドナルド・トランプ米大統領 ©CNP/時事通信フォト

 トランプと政権は離れつつあるMAGAを引き止めようと、イラン戦争を、アドレナリンが噴出するエキサイティングなものとして賞賛するミームを大量にポストし始めた。映画『トップガン』、『ポケモン』、メジャーリーグなどのワンシーンとイラン爆撃の実写を組み合わせた動画だ。倫理的に許されるものではないが、MAGAの中核をなす白人男性を主なターゲットとして連発している。

 しかし、イラン戦争によるMAGA離れはトランプが自分で蒔いたタネだ。なぜなら、2024年11月の大統領選でカマラ・ハリスを破った日の勝利演説において、トランプはこう言い放ったのだ。

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「私は戦争を始めるつもりはない。私は戦争を終わらせるつもりだ」

「アメリカは豊かなのに、なぜこれほど生活が苦しいのだ」

 トランプが大統領に就任するはるか以前より、アメリカは豊かな経済力をテコに世界全域に絶大な影響力を発揮し、度重なる他国への軍事介入を行ってきた。その一方、開発途上国への国際支援にも莫大な国家予算を使ってきた。

 その背後でアメリカの庶民は「アメリカはそれほど豊かなのに、なぜ自分はこれほど生活が苦しいのだ」と不満を募らせてきた。その層がトランプを支持した。トランプが2016年の大統領選から唱えてきたキャッチフレーズ「MAGA」(Make America Great Again/アメリカを再び偉大に)は、そうしたトランプ支持者を指す言葉となった。当人たちもMAGAを自称し、MAGAは大きな社会的ムーブメントとなった。

 MAGAは「古き良きアメリカ」の復活も目指した。なかにはアメリカの独立年「1776」の旗を振る者すらいる。キリスト教の教えに則って中絶や同性婚に反対し、男女の役割を明確にしようとした。人種・民族マイノリティ、性的マイノリティ、障害を持つ人など、あらゆる少数派を受け入れる「多様性」を嫌い、企業や政府の雇用方針における「D.E.I.」(Diversity=多様性、Equity=公平性、Inclusion=包括性)の廃止を歓迎した。

2025年2月5日、トランスジェンダーの女子競技への参加を禁じる大統領令への署名を終えたトランプ米大統領(中央) ©EPA=時事通信社

MAGAが怒っている理由は…

 しかし、大統領2期目のトランプはMAGAへの公約を破り続けた。

 2月末にイランへの攻撃を開始する直前の2026年1月、米軍はベネズエラへの電撃作戦を行い、マドゥロ大統領を拘束し、米国に連行した。

 昨年後半から今年にかけてはカリブ海と東太平洋で「麻薬密輸の疑いがある」船舶を何度も撃沈させている。

 イランには2025年6月にも爆撃をしており、それ以前にはシリア、ナイジェリア、ソマリア、イラク、イエメンに対して軍事作戦を行なっている。その多くはボコ・ハラム、ISISなどテロ組織の掃討作戦だった。MAGAはこれに怒っている。莫大な税金が、アメリカ国内で必死に働く自分と家族、コミュニティのためには使われず、戦費として浪費されているのだ。

 2026年3月19日、国防総省改め「戦争省」のピート・ヘグセス長官は、戦費の追加予算2000億ドルを要求した。その際、ヘグセスはこう述べた。

「悪者を殺すには金が必要だ」