果たされない「アメリカ・ファースト」

 トランプは、何事においてもアメリカを第一とする「アメリカ・ファースト(米国第一)」も唱え続けてきたが、これも全く果たされていない。

2025年1月20日、大統領就任式でのドナルド・トランプ氏 ©EPA=時事

 イラン戦争によって原油価格が上がり、ガソリン代が急騰している。

 ガソリンの価格は、全米平均で1ガロン(=3.78リットル)当たり3.79ドルとなっている(3月18日時点)が、イラン戦争開始前は2.91ドルだった。アメリカで人気の中型SUVなら、一回の給油が50ドル程度から64ドル程度に跳ね上がったことになる。庶民には大きな負担だ。

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 ガソリン代だけでなく、そもそもインフレによる物価高が続いており、加えて関税にも振り回されてきた。医療保険制度の問題は医療費の値上げだけでなく、人によってはそのために医療を諦めざるを得ないという非常に苦しい選択をも迫っている。

少女への性加害「エプスタイン問題」も

 さらにエプスタイン・ファイルの問題もある。資産家の故ジェフリー・エプスタインと共に未成年の少女たちに性加害を加えた者に、「リベラルの有力者が多数含まれている」とMAGAはファイル公開を強く要求してきたが、今もまだ「残り300万ページ」が未公開のままだ。

ドナルド・トランプ氏がジェフリー・エプスタインと並んで写る、撮影日不明の写真(米司法省が公開している「エプスタイン・ライブラリー」より)

 こうした不満がいくつも重なり、トランプの支持率は下がっている。

 2025年1月の大統領就任式の時期にはトランプの支持率は52%あったが、同年3月に支持と不支持がどちらも48%で拮抗状態となり、以後は下がり続けている。イランへの攻撃を開始した翌日の3月1日には支持は41%と過去最低となり、不支持が57%に増えた(ニューヨークタイムズ紙による調査結果)。

トランプの“裏切り”をインフルエンサーが発信

 こうした背景があり、イラン戦争の勃発以来、MAGAインフルエンサーたちはトランプがいかに自分たちを裏切ったかを日々、自身のポッドキャストで訴えている。テレビの報道番組にキャスターやコメンテーターとして出演するのとは異なり、ポッドキャストは自身の意見だけを、ほぼ規制なく、長時間にわたって延々と語ることのできるフォーマットだ。

 インフルエンサーたちはMAGAの動揺を敏感に感じ取り、その動揺を誇張してこのフォーマットにぶつける。MAGAはそれを聞いてトランプへのさらなる不安や懐疑を膨らませていく。

イラン攻撃は「正気の沙汰とは思えない」

 ジョー・ローガンはSpotify(インターネットラジオ)で最も人気のあるポッドキャスト『ジョー・ローガン・エクスペリエンス』を15年間にわたって続けている。視聴者の9割は男性で、その影響力の多大さで知られる。

人気コメディアン、ポッドキャスターとして大きな影響力を持つジョー・ローガン。Netflixでもスタンダップコメディなど複数の番組が制作・配信されている

 2024大統領選の直前にローガンがトランプと3時間語り合った回は5600万人が視聴し、ローガンは選挙日の前夜にトランプへの公式支持を表明した。この時期、ローガンはトランプの対抗候補であったカマラ・ハリスをゲストとして招くことを断っている。

 とはいえ、ローガンは保守一辺倒ではなく、今年1月にICE(移民・税関捜査局)が米国市民の女性を射殺した事件ではICEをナチス・ドイツのゲシュタポに例えるなど、トランプ政権への批判も行ってきた。

 今回のイランへの攻撃については「まったく正気の沙汰とは思えない」とした上で、「トランプは『これ以上戦争はしない』と公約した。それなのに、なぜ始めたのかさえ明確に説明できない戦争を起こした」と批判している。