時代考証に基づいた鮮やかな色彩設計
凝った色彩設計でも評価されているショメ。今作は鮮やかな色彩が多用されている。
「前の2作は落ち着いたロートーンが中心でしたが、今回は過去が舞台なので、光の使い方を含めカラフルな色調を意識しました。古い時代を描く時はセピアなど褪せた色がよく使われるので、逆らってみようかなと(笑)。それに当時のフォトクローム(モノクロ写真に着色したカラー写真)を見ると、ドレスや街並みなどは今より色鮮やかだったんです。もちろんカリカチュア(誇張)はしていません。色だけでなく衣裳や小物、車から家の壁紙まで、時代考証に沿って正確に設定しました。レコードプレイヤーなどの機器は使っていた時代を考えて、物語の時代より少し古いモデルの資料を参考にしています」
企画から8年、制作を通じてパニョルの複雑な人生をあらためて実感したという。
「アメリカ映画が好きなマルセルが英語教師をしていたことや、戦後アメリカ映画に課した関税で自国の映画を支援しようと提案したこと。娘の悲劇など家族のエピソードもあまり知られていませんでした。彼が永久機関の装置に魅了されていたことも発見でしたね。脚本作りは、マルセルの記憶を1ページずつ振り返っていくような作業でした」
『イリュージョニスト』の後、長期にわたるプロジェクト維持の困難さからアニメーションから離れたショメ。その後は『ぼくを探しに』(13年)など実写畑で活動していたが、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(24年)のアニメーションパートを手がけるなど近年は古巣での活動も再開した。
「今は『ベルヴィル・ランデブー』の続編の絵コンテを作成中で、その後に原作物の実写SF映画のプロジェクトを計画しています。まだ構想中ですが、実写でワンシチュエーションのコメディ映画も撮りたいですね。今後アニメーションと実写どちらを撮っていくのかは、私にもわからないんですよ(笑)」
フレキシブルなスタンスは、手描きとCGを組み合わせた作風にも見てとれる。
「テクノロジーはツールのひとつですから、新しいものには常にオープンです。古典的な手法でキャリアをスタートしましたが、すべてを手作業に頼るのは大変な作業量になるんです。マルセルだって新しいテクノロジーを取り入れながら、多くの素晴らしい作品を遺したのですからね」
<プロフィール>
シルヴァン・ショメ 1963年11月10日、フランス生まれ。アニメーション作家にして映画監督。98年の短編アニメーション『老婦人とハト』を経て、2002年に『ベルヴィル・ランデブー』で長編映画デビュー。アカデミー賞で長編アニメ映画賞、歌曲賞の2部門にノミネートされ注目を集める。その後の『イリュージョニスト』(10年)を経て、今作が15年ぶりの長編アニメ監督作品となる。
INTRODUCTION
アカデミー賞長編アニメーション映画賞ノミネートの『ベルヴィル・ランデブー』(02年)や『イリュージョニスト』(10年)を手がけた、フランスのアニメーション作家、シルヴァン・ショメの15年ぶりの長編アニメーションとなる最新作。実在したフランスの国民的作家にして劇作家、映画監督でもあったマルセル・パニョルの生涯を、これまでのショメのアニメーション映画には少なかったセリフを活かして追ってゆく。独特なキャラクターと唯⼀無⼆のタッチは健在で、⼆⼈のマルセルが⾃らの⼈⽣を振り返る事実に基づく物語を、リアルとファンタジーを融合させて描き出す。
STORY
1956年パリ。フランスの国⺠的作家マルセル・パニョルが雑誌連載の執筆を依頼され、何を描くか悩みながらも最初の⼀⾏を書き始めると、少年時代の⾃分が突然現れる。筆が進むにつれ、故郷プロヴァンスでの学生時代やパリで教師を務めた時代、その後演劇界で作家としてデビューし、映画界で監督として活躍するまでの数々の記憶が鮮やかに蘇る。
STAFF & CAST
原題:Marcel et Monsieur Pagnol/監督・脚本・キャラクターデザイン・ストーリーボード:シルヴァン・ショメ/声の出演:ロラン・ラフィット、ジェラルディーヌ・ペラス、ティエリー・ガルシア/2025年/フランス・ルクセンブルク・ベルギー/91分/配給:クロックワークス/2026年11月6日より全国順次公開/© 2025 WHAT THE PROD - MEDIAWAN KIDS & FAMILY CINÉMA - BIDIBUL PRODUCTIONS - WALKING THE DOG


