本来は防犯グッズであるはずの“盗撮機”の進化が止まらない。もはや女性に「グッズを見破れ」とか、「盗撮に気付け」というレベルにはない状態になっている。

売りさばかれた盗撮用の靴は行方不明のまま

 例えば、ボールペン型、メガネ型、スマホケース型、USB型、ボタン型、紙コップのフタを偽装したカメラ……。Wi-Fi搭載の超小型カメラもあり、専用のアプリをインストールすれば、スマホをリモコンとして使うことができる。そんな商品が存在することを知っていなければ、おそらく女性は目の前で盗撮されていても気付かないだろう。

1センチ角にも満たないWi-Fi搭載の超小型カメラ(写真撮影:筆者)

 2014年7月、京都府警は小型カメラを仕込んだ盗撮用の靴を販売したとして、通販サイトの運営会社社長ら2人を府迷惑行為防止条例違反(盗撮)ほう助などの疑いで逮捕した。同社は2年間で約2500足を販売し、6000万円以上を売り上げていたという。社長らは略式起訴され、それぞれ罰金50万円と罰金20万円を言い渡されたが、売りさばかれた靴は行方不明のままだ。

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 この事件をきっかけに靴カメラは市場から姿を消したが、盗聴器や盗撮機を駆除する業者は「あんなものは簡単にできますよ。靴の先に穴を開けるだけですから。雨の日はレンズが曇るし、外で撮るとハレーションを起こすから、彼らは屋内にいる女性を狙うんですよ」と話す。ある盗撮犯は「顔と下半身の別撮りは基本。被写体の顔さえよければ、スカートの中は合成でも売れる」などと公判で述べた。

盗撮犯に対する刑罰が軽すぎる

 今年6月、神戸市灘区で女性専用のシェアハウスを経営していた男(60)が、約6年間にわたって入居者の女性の脱衣シーンを盗撮していたという事件があった。男は電気街でボールペン型と腕時計型のカメラを購入し、風呂場の脱衣所にさりげなく設置。女性たちはまったく気付いていなかったという。

ペン型の小型カメラ。気付かれることはほぼないだろう(写真撮影:筆者)

 この事件が発覚したのは、男が被害者の一人に裸の写真を送り付けて、「援交でもいいから、エッチさせて」と迫ったためだが、男が初犯で被害者の女性たち3人に示談金として各100万円ずつ用意したことなどから、執行猶予付きの有罪判決を言い渡されて釈放された。

 ここが第二の問題なのだ。現在の取り締まり状況では、盗撮犯に対する刑罰が軽すぎるのである。通常の盗撮犯の場合、初犯で、被害者との示談が成立していれば、まず不起訴処分になる。2回目なら罰金30万円、3回目なら罰金50万円が“相場”だ。4回目になってようやく懲役刑を科される可能性が出てくるが、大半のケースでは執行猶予付きの有罪判決が言い渡されるのが関の山だ。