1ページ目から読む
2/3ページ目

今は全国的に盗撮を網羅する法律がない

 それでも執行猶予中に5回目をやるようなアホだけが刑務所に行くのかと思いきや、性暴力事件に詳しい犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長の上谷さくら弁護士(第一東京弁護士会)によると、「情状によっては再度の執行猶予が付くことも十分あり得ます。私は盗撮だけで刑務所に行ったという人の話を聞いたことがありません」というのが“実態”なのだ。

「今は全国的に盗撮を網羅する法律がない状態。各自治体の迷惑防止条例などで取り締まれるが、刑罰が軽すぎる上、私的スペースは処罰の対象外となっている条例もあり、規制は十分とは言えない。条例の問題点は、健全な社会風紀を乱すことを焦点にしていて、被害者の性的な被害については、あまり頭にないことです」(上谷弁護士)

メガネタイプの小型カメラ。「つる」の部分にマイクロSDカードを仕込む仕様になっている(写真撮影:筆者)

 9月8日、犯罪被害者支援弁護士フォーラムは東京都内でシンポジウムを開き、刑法に「盗撮罪」を創設すべきだと訴えた。罰則についての提案の概要は下記の通りである。

ADVERTISEMENT

〈単純な盗撮の場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金〉

〈盗撮により得られた記録を人に提供したり、譲ってもらったりした場合、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金〉

〈不特定若しくは多数の者に提供、又は陳列した場合、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金〉

 だが、多くの盗撮犯を取り締まる各自治体の迷惑防止条例の罰則が「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(東京都など)であることを考えると、これまでの実効性の乏しさからして、甘すぎるのではないか。

「我々もこれで満足しているわけではない。これが盗撮罪を作るとっかかりになればいい。刑法のさらなる改正として、法制審議会の中で議題として取り上げていただきたいということです」(犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務局長の高橋正人弁護士)

恐喝容疑で逮捕された「盗撮ブラックハンター」なる集団

 第三の問題もある。盗撮という行為をナメているのは、実行犯ばかりではない。盗撮犯を街中で見つけ出して恐喝する「盗撮ブラックハンター」なる集団までいるのだ。

 警視庁は今年6月、JR京葉線で盗撮していた男性(44)を脅して、現金100万円を奪ったとして、20代の男4人を恐喝容疑などで逮捕した。