予測を遥かに上回るスピードで進化を続けるAIが、世界を大混乱へと陥れている。その脅威は日本にも直撃し、名だたる大企業が次々と標的となって個人情報の流出被害が相発。サイバー攻撃を受けたGMOインターネットグループの熊谷正寿社長は、記者会見の場で涙ながらに謝罪する事態となった。
なぜいま、ハッカーは日本を狙うのか。「週刊文春 電子版」では、狙われる構造的要因や、個人・企業が大切な資産を守るための具体策を特集。本記事では、急速に迫るAI悪用の実態について、一部を抜粋してお届けする。
GMOに不正アクセス
「最初に異変に気が付いたのは10月21日の午後4時頃。FX口座の取引画面を見ていると、数秒おきにどんどん損失が出て、たった2分間のうちに600万近くを失ってしまって――」
そう語るのはFX取引を副業とする40代の会社員男性。利用していたのは、GMOインターネットが提供する「お名前.com デスクトップクラウド」。仮想サーバーに接続することで24時間、自動取引を可能にするサービスだ。
「GMOは国内でも最高のセキュリティだと思い信頼していました。最初はエラーかと思いましたが自分が設定したのとは違う設定で取引されており、『これはハッキングではないか。AI攻撃ではないか』とパニックになりました」(同前)
その2時間後、男性のもとに一通のメールが届く。そこにはこう綴られていた。
〈我々はHacking Teamです。GMOが我々との交渉に応じることを拒否したため、予告通り、アカウントの残高をすべて破壊しました〉
◇
サイバー空間の安全性が揺らいでいる。
高市早苗首相が「皆様に大至急のお願いです」とXに投稿し、異例の呼びかけをしたのは21日午後9時55分のこと。
プログラミング言語PHPに深刻な脆弱性が発見されたという報告を受け、「午後11時に公開される修正パッチを可及的速やかに適用する準備をすること」「それが困難な場合は、ウェブサイト等を一時的に停止させることも、リスクを低減させるための有効策」と注意喚起を行ったのだ。
PHPは日本のホームページの約9割で使われているプログラミング言語。国際ジャーナリストの山田敏弘氏が解説する。
「サイバーセキュリティ企業が米OpenAIのモデルなどを使うことで、2件の脆弱性を発見。ソフトウェアやシステムにある脆弱性の深刻度を0から10で評価するCVSSスコアは9.2と、事態は差し迫っており、金融機関やインフラが攻撃されると大きな被害に繋がるため、速やかに対応する必要がありました。実際に、修正パッチが公開されるまでの20時間のうちにAIを悪用したと考えられる大量の不正アクセスが検知されています」

