内容面でも課題は大きい。外国人労働者が日本での労働に魅力を感じるためには、生活面での対応が極めて重要になる。例えば韓国では在住する外国人に対して415時間の韓国語学習を政府が無償で実施する仕組みを整えているのに比べ、日本では日本語学習をどう行うかの議論を今から開始する状況で、外国人が安心して暮らせる環境整備の点で大きく立ち遅れている。
重要なことは、企業任せにした結果、さまざまな問題が起こった技能実習制度の二の舞に決してしてはならないことだ。中途半端な制度では数は足りても落ちこぼれの人材しか集まらない。その意味で政府の真剣度が問われているのである。であれば、政府は外国人観光客と同様に、新たな制度で来日するアジアの若者に対して「来てくれてありがとう。皆さんを歓迎します!」というメッセージを打ち出すべきだろう。優秀な人材であれば企業や社会への貢献度も大きく、閉塞感を打破するきっかけにもなるだろう。受け入れるアジアの青年にどう向き合うのか、次期国会では、日本の将来を左右する重要な分岐点であるとの視点に立った真摯な議論を期待したい。
※「文藝春秋」11月号では、「亡国の『移民政策』」と題する特集を組み、日本国際交流センター執行理事・毛受敏浩氏、立命館アジア太平洋大学学長・出口治明氏、『日本の年表』著者・河合雅司氏による大座談会を掲載しています。“隠れ移民大国”日本が抱える様々な問題を徹底検証した特集記事をぜひお読みください。