安倍政権はなぜこれほど長く続いてきたのでしょうか。
「朝まで生テレビ!」風に言うと「自民党に安倍さんにモノを言う人間がいない!」「野党がだらしない!」という意見もありますが(田原さん真似してごめんなさい;-)、それはそのとおり、というところがありつつも、これらはやはりぜんぶ長期安定政権の「結果」なんですね。
「原因」ってなんだろう、というところからこの記事を書こうという思いが沸き起こってまいりました。政策や、政権運営戦略といった長期安定政権を可能にしているものを取り上げなければ、真に説明したことにはならないからです。
日本政治にとって長い、長い3年間だった
私は2015年に『日本に絶望している人のための政治入門』を文春新書から上梓しました。その頃は、第三極、たとえば維新の動きにも力が残っており、民主党(当時)も与党時代と比べて衰えたりとはいえどもまとまりがあり、大物政治家が揃っていた印象です。安倍政権もアベノミクスを掲げ、金融緩和のみならず規制緩和についてもはじめの1、2年に取り組んだ結果、まだまだ経済政策への期待が存在していた時代でした。
ところが、2018年のいま、政界にはどんよりとした重たさしか残っていません。第三極はうらぶれ、野党は離合集散を繰り返し、小池百合子旋風とその失敗は民進党を焼け野原にしました。政権は安定しているものの、長引いたスキャンダルで傷を負っています。日本政治にとっては、長い長い3年間だったわけです。
3年間を振り返って明らかになった安倍政権の「勝ちパターン」
3年間を振り返るにあたり、過去に書いたものを読み返す過程で分かってきたのは、安倍政治のパターンです。それは、新著『あなたに伝えたい政治の話』でも書いたとおり、攻めと守り、積極性と消極性のバランスを巧みにコントロールし、選挙に勝ち続けるプラスのサイクルを維持する戦略です。下の図をご覧ください。
第一に、安倍政権は歴史的、国際的に見て基本的に正しい課題設定を行っている。このことはスタート地点として重要なことです。具体的にはデフレ脱却であるとか、改革路線をとることとか、経済的な基盤を再活性化して日本の存在感を高めること、国際情勢を踏まえた現実的な外交安保政策、といったものです。
第二に、与党を割りかねない論点については極めて慎重になるという消極性です。政権が明確に守りに入っているのは、こうした分野です。内政上最も重要な経済政策は実は安全運転に終始しており、小泉純一郎政権とは対照的です。その結果、安倍政権下では大玉の改革案件はほとんど先送りされてきました。
第三に、しかしそれでは成果が挙げられないので、官僚機構の通常運転の延長線上にある政策をうまく優先順位付けする巧みさを持っています。
第四に、政権は民主主義の枠外にある政策に依存して大きな成果を挙げてきました。つまり、安倍政権がもっとも攻めに出て存在感を発揮してきた施策は、民主主義による合意形成の必要が低い外交と金融の分野に集中している、ということです。
第五に、モリカケ問題ではダメージコントロールに稚拙さが目立ちましたが、基本的にこの政権は歴代自民党政権の中でも危機管理に強い政権である、ということが言えます。
そして、比較的短く刻んだ選挙で、勝つ。ここで初めて、最初のお題設定に戻れるのです。後は選挙のたびにこのサイクルをくるくる繰り返していけばいい。攻守の使い分けと、短期的に選挙での勝利を積み重ねて支持を更新していくサイクルが、政権の勝ちパターンを支えているのです。