ケンシロウに京急の制服を着てもらった
――なるほど。確かに鉄道は公共的な存在ですから、なんでもかんでもやればいいわけじゃない。
櫻井 もともと駅名看板にアレンジを加えたのは、『北斗の拳』が最初じゃないんです。2年前にリラックマさんとコラボして、京急久里浜駅を「京急リラッ久里浜駅」にしたりして。リラックマさんは『北斗の拳』と比べれば万人受けするものだと思うんですけど、それでも当時はおっかなびっくりでした。ただやってみたら思いのほか喜んでいただけました。そこで今回のキャンペーンにもつながった。ギリギリのところを攻めるということで、京急の制服をケンシロウにも着てもらったんですよ。で、制服のボタンは北斗七星になっている。よく見ないとわからないと思うんですけどね(笑)。制服を着ることで安全を守るという意思も伝えつつ、その上で遊び心もあるよ、と。
――さらに全駅分の新駅名案を小中学生から募集するというのも驚きました。え? そんなに簡単に駅名変えちゃうの?と。
櫻井 さまざまなご意見を頂いております。きっかけは大師線の産業道路駅の駅名変更でして、どうせならば当社の一存で決めるのではなくて地元の方、それも未来を担う小中学生の方々のご意見を聞きたいというところからはじまった企画なんです。それを創立120周年にあわせて全駅でやってみようと。ただ勘違いされている方もいるんですが、全駅名を変更する訳じゃなく、数駅程度を予定しています。応募された駅名案はあくまでもひとつのご意見として受け止めるもので、多数の応募があったら変えるとかそういうことじゃないんです。そもそもは沿線の方々にいつも使っている駅の名前の由来とか地域の歴史とかを改めて考える機会にしていただきたいなという思いもありまして……。頂いた駅名案などのご意見を踏まえて社内で議論を重ね、最終的には来年の春頃にひとつの結論をお示しできればと思っています。
チャレンジ精神を生み出す京急の社風とは
――こうした世間を驚かせる企画、なかなか他の鉄道会社ではできないと思います。何かこのチャレンジ精神を生み出す社風のようなものがあるんですか?
櫻井 う~ん、他の会社に勤めたことがないのでわからないんですが(笑)。でも、ウチはイベントやキャンペーンだけでなくずっと独自性があるって言われてきてますよね。鉄道の技術的な面でも、先頭車両は絶対にモーター車にしている。それは重量を重くして脱線のリスクを減らすためなんです。あと、他社さんでは中央でコンピュータ制御していることが多い信号操作も、ウチは沿線の信号扱所で人が手で操作しています。そうすることで、ダイヤが乱れた時でも遅れを最小限にとどめたり、回復を早めるメリットがある。鉄道ファンの方におなじみの「ドレミファインバータ」もそのひとつでしょうか(笑)。こうしたウチならではの“独自性”というのが、鉄道会社らしからぬ企画を生み出すチャレンジ精神につながっているのかもしれませんね。