「京浜急行電鉄」はいわゆる“大手私鉄”の一角に名を連ね、路線の総延長は87.0km。品川から海沿いを走って横浜、そして横須賀・三浦や逗子方面を結ぶほか、羽田空港へのアクセスも担う首都圏の交通網に欠くことのできない“大動脈”のひとつだ。最高時速の120km/hは、京成電鉄の特急スカイライナーを除けば、なんと関東の鉄道路線で最も速い。下町風情漂う海沿いの町を、高速で駆け抜けてゆく赤い電車。それを人は「路地裏の超特急」と呼ぶとか呼ばないとか……。
なぜ京急ばかり“斬新な”企画を連発できる?
そんな京急電鉄なのだが、最近鉄道会社に“あるまじき”やわらかさでしばしば話題になっているのだ。例えば今年の夏。マンガ『北斗の拳』とコラボして、駅名を「京急かぁまたたたたーっ」(京急蒲田駅)に変えてしまうなどという荒業を見せた(正確には駅名看板を一時的にアレンジしただけだが)。さらには、創立120周年事業の一環で全72駅の“新駅名案”を沿線の小中学生から募るという企画も行っている。こうした鉄道会社の保守的なイメージに反する取り組みの数々が、ネットを中心に大いに話題になった。いったいなぜ、京急はこんな“斬新な”企画を連発しているのだろうか。京急電鉄が、鉄道会社なのに“やわらかすぎる”ワケ。京急電鉄鉄道本部運輸営業部長の櫻井和秀さんに教えてもらった。
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『北斗の拳』のコラボ、当然懸念はあったんです
――京急さんは『北斗の拳』の駅名に代表されるような、「そこまでやるか?」というキャンペーンを連発していますね。でも、鉄道会社って前例にないことはやらないようなイメージがあります。
櫻井 確かにおっしゃる通りで、鉄道会社はどうしても保守的な部分があるんです。それは何より安全を第一に考えているから。公共交通機関にとっていちばん大事なところですから、安全を脅かす可能性があることは絶対にやらない。ただ、逆に言えば安全を脅かさないならばどんどんいろんなことにチャレンジしていいんじゃないか、と私は思っていまして。
――安全を重視するがゆえに、今までにないことはやりにくい風潮が生まれてしまう。でも、そこを打破して……。
櫻井 そういうことです。だから私はいろんなことをやっていこうと思っているし、部下にもよく言っているんです。『北斗の拳』のコラボもそうでしたが、当然懸念はあるんです。ご存知の通り、あのマンガは暴力的な表現がありますよね。マンガなら好きな人が読めばいいんですが、駅の場合は老若男女さまざまな方にご利用頂いている場所です。そこでお客さまに不快な思いを抱かせてはいけませんから……。だからどこまで攻めることができるのか、どういう工夫をすればお客さまに嫌な思いを抱かせずに済むのか。そこにはかなり気を使う。でもそれでもうまく工夫できるならば、やったらいいんですよ。