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2018/11/03

日本にしか存在しない、摩訶不思議な「移民」の定義

自民党政務調査会・労働力確保に関する特命委員会 
「『移民』とは、入国の時点でいわゆる永住権を有する者であり、就労目的の在留資格による受入れは『移民』には当たらない」

自民党オフィシャルサイト 2016年5月24日

「入国の時点でいわゆる永住権を有する者」という定義は耳にしたことがない。IOM(国際移住機関)は「移民」を「当人の (1) 法的地位、(2) 移動が自発的か非自発的か、(3) 移動の理由、(4) 滞在期間に関わらず、本来の居住地を離れて、国境を越えるか、一国内で移動している、または移動したあらゆる人」と定義している(オフィシャルサイト)。また、「多くの専門家は、移住の理由や法的地位に関係なく、本来の居住国を変更した人々を国際移民とみなすことに同意しています」とも記されている。

IOM(国際移住機関)ウェブサイトより

 一方、先の定義が記されていた自民党の特命委員会による「『共生の時代』に向けた外国人労働者受入れの基本的考え方」というレポートには、「移民政策と誤解されないような仕組み」「移民政策と誤解されないように配慮しつつ」と書かれていた。そしてとどめは「『移民』には当たらない」。IOMの定義に沿って考えれば、新たに日本にやってくる外国人労働者は「移民」であり、安倍政権が主導する入管法改正は「移民政策」である。

外国人労働者受け入れ、方針転換を主導したのはこの人

安倍晋三 首相
「移民政策はだめだけど」

朝日新聞デジタル 8月14日

菅義偉 官房長官 ©文藝春秋

 外国人労働者受け入れについて、政府の方針転換を主導したのは、急激に進む人手不足に危機感を抱いた菅義偉官房長官だったという。菅氏が安倍首相にかけあうと、「移民政策はだめだけど」と釘を刺しつつ、「必要なものはやっていこう」と応じたのだという。とにかく安倍首相の頭の中では「移民政策はだめ」なのだ。だから、先の特命委員会のようにおかしな「移民」についての定義ができあがる。

 なぜ、安倍首相はここまで「移民」という言葉を嫌うのか? ロンドン大学高等研究院難民法イニシアチブの橋本直子氏は「政権中枢を握っている人々や政党支持者の中に、『イミン』と言う言葉に激しいアレルギー反応を起こす方々がいるからでしょう」と指摘する(ハフポスト日本版 3月5日)。その上で、今の安倍政権が「『移民政策はとらない』としつつ外国人受入れを拡大し続ける、という最悪の移民政策」を行っていると警告する。これまで多くの西欧諸国が移民政策を失敗させてきたが、日本も同じ轍を踏んでいるというのだ。安倍首相の「移民政策ではない」という言葉は、そこから目を逸しているにすぎない。

安倍晋三 首相
「世界から尊敬される日本、世界中から優秀な人材が集まる日本を創り上げてまいります」

所信表明演説 10月24日

 そのための具体策がまったく見えてこない。それでも政府は来年4月からの制度実施を目指しているという。

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