衆参両院の印刷関連費は約12億円
(2)のIT化で具体化の第一歩となるのがペーパーレス化であり、国会に先駆けて自民党の政調会が実行したわけだ。たかがペーパーレスと侮ってはいけない。「2020年以降の経済財政構想小委員会」事務局長次長で国会議員になる前はNTTドコモの社員だった小林史明衆院議員はこう指摘する。
「国会では文書の電子化が進んでおらず、2018年度予算で衆参両院の印刷関連費は約12億円にも及んでいます」
小林議員が指摘するように、政調審議会や部会は予算案や法案を審議、了承する場で、各省庁から大量の説明資料が配布される。永田町、霞が関はネット全盛の今の世も紙の山に埋もれているわけであり、ペーパーレス化が浸透すれば印刷費が減らせる。また、
このため衆院は2019年度予算の概算要求でICT(情報通信技術)化の調査費として700万円を計上。各議員へのタブレット端末の配備にかかる費用や効果を検証する。今臨時国会からは、請願処理の経過報告書を印刷せず、国会関係者専用ページに掲示することになっている。「平成のうちに」の看板である小泉進次郎議員が部会長に就いた自民党の厚生労働部会では、紙の資料の配布数を減らし、スクリーンに説明資料を映し出すなどの取り組みを始めている。
たかがペーパーレス化されどペーパーレス化
ところが、である。
29日の衆院本会議で高市早苗議院運営委員長(自民)が、ペーパーレス化の推進、法案審議の方法改善、本会議場への「押しボタン方式」の導入の3点からなる国会改革試案を提出したところ、野党が「勝手な提案だ」と反発し、開会が予定より45分遅れた。
高市氏は批判を受け、改革案の文書を撤回してしまった。
立憲民主党の辻元清美国対委員長は「各党と協議する前に(改革案を)全然違うところに示すのは、あってはならないこと」、国民民主党の原口一博国対委員長も「今後もこの問題を追及したい」と憤った。
とりあえず野党の怒りは、高市委員長が提案の手順を間違えたことに向いており、ペーパーレス化そのものに反対、というわけではなさそうだが、野党議員の中には「(会期末ぎりぎりで重要法案を廃案に追い込む上で)印刷時間を利用することは効果的な抵抗戦術」という意見もある。たかがペーパーレス化されどペーパーレス化。衆参の規則改正は与野党全会一致が慣例になっており、一筋縄ではいかないのだ。
それでも小泉進次郎議員は、「平成のうちに」の提言を高市委員長に提出した10月25日にこう語っている。
「(ペーパーレス化が実現したら)国会本会議場の景色、委員会の景色が一変しますから。やはり、景色が変わるっていうのは意識を変えますよ」