少子化の進展、犬と比べた場合の飼いやすさ、いわゆる「SNS映え」……。近年の猫ブームの理由として様々な指摘がされています。セクシュアリティや人口減少を論じる一方で、20年以上も猫を愛してきた東大の社会学者が、中でも鍵を握ると踏んでいる理由について考察しました。

空前の猫ブーム。その理由とは? ©iStock.com

猫ブームの背景

 このところ空前の猫ブームである、らしい。

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 日本人の犬猫の飼育数(約2000万匹)が15歳未満の子どもの数(約1600万人)を越え、空前のペットブームだと騒がれたのが2015年頃。近年は猫と犬の飼育数がほぼ同じになり、SNSでも愛らしい猫の画像や動画が人気を博している。

 長年猫を飼ってきた身の上としては、「猫が可愛いのは、あたりまえ。やっと時代が追いついてきた」と言いたいところだ(笑)。しかしペットブームや猫ブームの背景には、やはりそれなりの社会の変化がありそうだ。

東大・本郷キャンパスの懐徳館庭園で寝そべる猫

 たとえば筆者が20数年前に猫を飼い始めたとき、「ペットも家族の一員」というような言い方は、まだ一般的ではなかった。家族を研究する専門の学会でも、「ペットは家族かいなか」が大真面目に論じられていた(反対意見も強かった)。だがいまでは「ペットは家族ではない」などといえば、他人から白い眼でみられてしまう。

 これは家族の定義(境界設定)をめぐる人々の意識が変化し、愛情やケアの感情があるかぎり、ペットも家族であると人々が考えるようになったからである。なぜそうなったのか。

 たとえば少子化が進んで、家族と呼べる人の数が減り、愛情を投射する対象が必要になったという面はあるだろう。また、共働きと都心回帰が進む現代日本では、猫は犬よりも鳴き声が小さく、毎日の散歩も必要ないので、飼いやすいという面もあるに違いない。

 ただ個人的には、天寿を全うすれば20年近く一緒に過ごすことになる、猫と飼い主との独特の関係にこそ、猫ブームの鍵があるように思われてならない。

こちらは白金台キャンパスの猫。夜の東大で優雅に佇む