中学受験において、合格判定80%以上を取っていても不合格になる、あるいは偏差値的に全く届いていなかったのに逆転合格をした……というケースは多々ありますが、その理由はなんだか分かりますか? 受験本番が近づいてきて、模試の偏差値や合格判定に一喜一憂し、志望校の変更も検討し始めるころですが、偏差値が届いているかどうかだけを、「合格できるかどうか」の目安にするのは危険だと、算数教育家で中学受験専門カウンセラーの安浪京子先生は指摘します。
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長く中学受験業界にいると、受験直前の模試の合格可能性判定で80%以上を取っていても不合格になる、あるいは偏差値的には全く届いていなかったのに逆転合格した、というケースをよく耳にします。その原因は何なのでしょうか?
前者に関しては、体調や精神状態がよくなかった……など、思いつくことがそれなりにあると思います。しかし、後者は? 突然、神が降りてくるほど、受験は甘くありません。
実は、ここに大きく関係しているのが「子どもと入試問題との相性」なのです。
他の子と点差をつける方法とは
ゆっくりじっくり問題を解くA君では、短時間に大量の問題をこなす処理型の入試問題だと時間内に終わらせることができません。国語の記述問題に強いBちゃんが、入試問題に一切記述問題のない学校に挑んでも、他の子に点差をつけることができません。
模試の合格判定や偏差値はあくまで「その模試での点数」によるものです。しかし、実際に志望している学校の入試問題が「模試」と同じような問題とは限りません。入試問題は学校によって傾向があり、その傾向と子どもの強みが合えば、模試での偏差値が届いていなくても受かる可能性が高くなりますし、逆だと低くなります。
そこで、拙著「中学受験 大逆転の志望校選び」では、人気校の入試問題の傾向を3つの軸から分析し、男子・女子別にマトリクスを作成しました。3つの軸とは、
(1)算数の問題が、典型題か思考題か?
(2)国語の問題に、記述問題がどの程度あるか?
(3)どの程度の処理力(スピード)が要求されるのか?
です。
ここでは、3番目の「どの程度の処理力(スピード)が要求されるのか」を軸とした「処理力マトリクス」(女子版)を例にとって、具体的に説明していきましょう。