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【静岡書店大賞】自分たちで本を届けたい

 静岡書店大賞は、書店員と図書館員が投票に参加するだけでなく、発表後の展開も熱が入っている。静岡県内の多くの書店で、12月のクリスマスシーズンから本屋大賞決定の4月の前まで、ほとんどの図書館でも関連の展示を展開する。売れ行きにも直結し、全国シェアに大きな影響もある。本好きの間でも、出版社にも一目置かれる賞に育ってきた経緯を、立ち上げメンバーのひとりである中土居店長にうかがった。

 静岡書店大賞は、中土居店長と戸田書店掛川西郷店の高木店長が飲んでいたときに、静岡県の書籍購入額の低さや全国の学力テストの読解力の成績について話題になった。自分たちなりに、本を勧めてきたつもりだったし、静岡県としても読書を推進してきたはずなのに、数字で見たときに成果が出ていないのではないかという反省が出た。もっと子どもたちに本を読んでもらうにはどうしたらいいかを考えた結果、静岡書店大賞につながったとのこと。

「もっと本を届ける、子どもたちに本を読んでもらう、10年先、20年先にもっと本を好きになってもらうために」と考えた結果、賞の骨子が固まってきた。児童書部門を作る。誰もが知っている名作絵本だけでなく、新しい作品に触れてもらうために、新作の児童書も3作品紹介する。一般の読者にも盛り上がってもらうために、小説部門も作る。売れている本はどうせ売れるのだから、その時点で発行部数が10万部を超えているものは省く。集計すると既刊や文庫も集まってきたことから、映像化したい文庫部門を作る。図書館で本に触れる機会も多いので、図書館員にも投票してもらう。こうして3年、先日、12月の上旬に、第3回の大賞が決まった。

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小説部門
 柚木麻子『本屋さんのダイアナ』(新潮社)
児童書・新作部門
 いわいとしお『うみの100かいだてのいえ』(偕成社)
 いもとようこ『かぜのでんわ』(金の星社)
 みやにしたつや『おかあさんだいすきだよ』(金の星社)
児童書・名作ロングセラー部門
 なかがわりえこ・おおむらゆりこ『ぐりとぐら』(福音館書店)
映像化したい文庫部門
 碧野圭『書店ガール』シリーズ(PHP文芸文庫)

静岡書店大賞ブログ
http://sstaisyou.eshizuoka.jp/
静岡書店大賞Facebookページ
https://www.facebook.com/sstaisyou

静岡書店大賞の棚。谷島屋浜松本店では、年間を通じて紹介している。

 表彰式に参加させていただいたが、運営も集計も手弁当で、授賞式の司会進行もプレゼンターも書店員や図書館員がする。副賞の「うなぎパイVSOP」だけはメーカーの春華堂さんに提供していただいているが、授賞式は会費制、カンパとボランティアで運営しており、新聞社や代理店のスポンサーは受けたくないという。手作りの良さを活かしたスタイルは、書店員・図書館員が子どもたちに本を届けたいという静岡書店大賞の原点としっかりと結びついて、中土居さんや高木さんから次の実行委員、そして若い書店員にも受け継がれていくのだろう。これからも静岡書店大賞、注目である。

(中央左から)柚木麻子さん、いわいとしおさん、碧野圭さんと、書店員、図書館員の記念撮影。

谷島屋浜松本店
住所:静岡県浜松市中区砂山町6-1 メイワン8階
営業時間:(書店)10:00~21:00(カフェ)10:00~20:00
URL:http://www.yajimaya.co.jp/
Twitter:https://twitter.com/yajimaya1872/