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“平成最後の怪物” 堂安律は一体何がすごいのか?

2018/11/16
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長友の明るさと本田の強気をかねそなえた男

 堂安は長友のように明るく、物怖じせずに外国人選手と交流し、チームに溶け込んでいる。スピードがない本田はコーチをつけて走力を磨いたが、堂安も法政大の杉本龍勇先生から走りを学んだ。メンタル面は本田の如く強気で、謙虚に反省はするがゴールを外してもミスしてもへこまない。ボールを持てば仕掛けるさまは香川真司のごとく素早く、ドリブルは乾貴士のように鋭い。攻撃的な選手でありながらハードワークし、守備に貢献する姿は岡崎慎司に通じるところがある。

 サッカー選手がいろんな要素を完璧に高い次元で兼ね備えているのは稀だ。運動量が少ないとか、メンタルが弱いとか、何かしら不安要素を持っている。

オランダ・フローニンゲンで3ゴールをあげている堂安 ©getty

 堂安もガンバ時代は運動量が少なく、当時チームメイトだった阿部浩之や大森晃太郎に及ばす、長谷川健太監督に「差を見せろ」と檄を飛ばされていた。だが、今はパラグアイ戦で見せたように豊富な運動量も彼の特徴になっており、堂安自身も「得点だけに集中することなくハードワークも出来ていると思います」と自信を見せている。

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 20歳ながら完成度が高い堂安は、これといった弱点や不安が見当たらないのだ。足りないのは国際経験ぐらいだが、それはこれから解消していける。

「20歳でA代表は世界的に見ると早くない」

 過去の経歴もエリートそのものだ。

 ガンバ大阪ユース上がりで、気持ちの強さ、フィジカルの強さは宇佐美貴史や井手口陽介らを越えるレベルにあった。16歳11か月11日でクラブ最年少でのリーグ戦デビューを果たすと、翌2016年にはトップ昇格を果たした。カテゴリー別代表では2014年にU-16代表に入り、AFCアジア選手権に出場。昨年は、U-20W杯にエースとして出場している。現在は日本代表を中心に活動しているが、堂安は東京五輪代表の選手でもある。

 20歳という若さで日本代表で活躍している選手は、過去を照らし合わせてもなかなかいない。中田がフランスW杯に出場した時は21歳で、中村が代表で欠かせない選手になったのはジーコが日本代表監督になった25歳だった。本田が南アフリカW杯でブレイクした時は、24歳である。だが、世界的に見れば20歳は決して早くはない。ロシアW杯でフランス優勝に貢献したキリアン・エムバぺは19歳である。

「20歳でA代表は世界的に見ると早くないですよ。エムバぺはロシアW杯で活躍している。もういう選手を見ると、もっとやらなって思いますもん」

©文藝春秋

 堂安は、涼しい顔で先を見据えている。

 もはや年齢など気にせず、代表選手の中軸になるべく階段を着実に上がっている。もちろん、そこには野心がある。本田たちが抱いたように、堂安も「代表の中心になってW杯に行き、ビッククラブでプレーする」と未来図を描いている。 

 ロシアW杯で本田が代表引退を宣言し、代表のシンボルとなる華のある選手が不在になっていた。堂安がその手を挙げ、少し止まっていた時計の針が再び動き出した。

 平成最後の怪物は、新元号最初の怪物になるはずだ。

“平成最後の怪物” 堂安律は一体何がすごいのか?

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