花粉症も治せる時代に
先進国を中心に患者が増え続ける現代病・アレルギー。その予防と治療をめぐる最先端研究に迫り、大きな話題を呼んだNHKスペシャル「新アレルギー治療」が『アレルギー医療革命 花粉症も食物アレルギーも治せる時代に!』として書籍化されました。本書は、アレルギー医療はいま、大きな転換期を迎えていると指摘しています。
小さな子どもに多い「食物アレルギー」の予防には、まず経口、つまり口からとる食物に注意を払う、という考えをもっている親は多いのではないでしょうか。前篇では、しかし子どものためにより気を配るべき対策があることが明かされました。
後篇は、さらに発症者数の多い「花粉症」について、医療研究の最前線に迫ります。
――本書では、アレルギーの治療についても、その最新研究が多数紹介されています。日本でもっともメジャーなアレルギー疾患といえば、花粉症です。花粉症が治る時代も近い、と期待が膨らみますが……。
そうですね。花粉症はいまや日本人の4人に1人が発症しているといわれています。2014年に花粉症の舌下免疫療法が保険適用になり、大きな話題になりました。それまでの、注射による免疫療法よりも身体的な痛みや通院の負担が大幅に軽減しました。千葉大学医学部の研究では、舌下免疫療法によって、7割の人に症状の改善が見られ、その中でも2割の人は根治しているということで、期待できる治療法だと思います。
さらに、花粉症を治すお米も2020年の実用化を目指して開発中です。花粉の遺伝子が組み込まれたお米を1日1食食べるだけで、花粉症が治るという、夢のような話が現実になろうとしています。
――レンジでチン!するだけ、という手軽さですね。
ふだん料理をしない人でも取り入れられるハードルの低さですよね。臨床研究中で、番組でも紹介しましたが、8週間で花粉を攻撃する細胞が70%も減少し、自覚症状がほぼなくなった、という患者さんもいます。
このほかにも、世界各地で花粉症を含む様々なアレルギーの治療法の研究がどんどんと進められています。
――いま、アレルギーの研究が飛躍的に発展しているのは、なぜですか?
「Tレグ」という特殊な免疫細胞が発見されたことが大きな契機となりました。20年ほど前に、大阪大学の坂口志文教授が発見した免疫細胞なのですが、体に有害な外敵を攻撃する免疫システムの中にあって唯一、無用な攻撃や誤った免疫システムの暴走を止める役割を果たす機能をもった免疫細胞です。詳しくは長くなるので、本を読んでいただきたいのですが「Tレグ」の働きをコントロールすることで、アレルギーを予防したり、治療したりといった、これまで不可能と言われてきたことが、可能になりつつあるのです。
――花粉症以外のアレルギーも治るのでしょうか?
食物アレルギーや動物アレルギー、アレルギー性鼻炎などについても、発症と治療のメカニズムは基本的に花粉症と同様だと考えられています。メジャーなものから新薬や新治療が開発されていくことになると思いますが、“アレルギーは一度発症したら、一生治らない”という認識は大きく変わろうとしています。