同期が次々と戦力外通告を受け……
プロとアマの最大の違いは「再現性」である。たとえばプロが90点の球でアマが100点の球を投げたとする。その1球だけを見れば後者が優れているのだが、アマレベルの選手はその球を続けられない。10球に一度、いや3球に一度でもプロ野球で通用するとはいえない。それは野球だけに限らず、料理の世界などでも同じだろう。
苦悩のままシーズンの幕を閉じた頃、高橋純のもとに心痛な報せが次々と飛び込んできた。同期入団の同級生である小澤怜史、黒瀬健太、茶谷健太が戦力外通告を受けたのだった。小澤と黒瀬は背番号100番台の育成選手としてホークスに残り、茶谷はマリーンズの育成選手での再出発となった。
なかでも同じ投手の小澤のことは、高橋純にとってもショックだった。小澤はドラフト2位の入団。一軍登板は入団3年で2試合のみだが、それでも高橋純よりも多いのだ。
「個人名を出してしまうのは申し訳ないけど、小澤がああいう形になったというのは僕らの世代もその対象ということですから」
ただその中で、高橋純は昨年11月~12月にプエルトリコで行われたウィンターリーグ(WL)に球団から派遣された。同時期には台湾でもWLが行われていたが、よりレベルの高いプエルトリコに送り出されたところに、まだホークスが高橋純に熱い期待を寄せているのを窺い知ることが出来た。
意気に感じたのは高橋純も同じだ。感謝の気持ちと共に、何か吸収して飛躍のきっかけを掴んでやろうと必死にやった。登板結果自体は0勝2敗、防御率7.08と振るわなかったが、感じた何かを掴んで帰国した。
「あっちは速いピッチャーばかり。僕が思いっきり投げてもチームでせいぜい真ん中くらいでしたが、それでも相手は空振りしたりファウルになったりした。開き直って真っ直ぐでいった場面もありました」
その思いっきりの良さは、高橋純が失っていた部分でもあった。
迎えた今年2月の宮崎キャンプ。ここまでを見る限り、高橋純は自分の進むべき方向性を定めて、投球フォームも徐々に固まってきている。14日のB組紅白戦では148キロをマークした。「自分の思っていることと体で表現していることの差が小さくなったと思います」と手応えを口にした。17日、初の対外試合となった社会人・セガサミー戦では“開幕投手”を任されて無失点ピッチングを見せた。そして23日の巨人2軍戦でも先発で3回無失点とまた好投した。
取り巻く環境が変わったことは否めないが、球団も、そしてたくさんのファンも高橋純は必ずや輝く宝石だと信じている。ここまでのキャンプは順調だ。プロ4年目、今年こそ示してくれるはずだ。
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