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“キューバの大谷翔平” ホークスの育成選手コラスと通訳ゲレーロの二人三脚

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/06/21
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公私にわたり支えてくれている存在

 こうして様々な面で成長し、生活面も「モンダイナイ」とニッコリ笑うコラス選手。そこには公私にわたり支えてくれている存在がいました。

 それは、通訳のゲレーロさんです。

コラスを公私にわたり支える“ネネ”こと通訳のゲレーロさん ©上杉あずさ

 ゲレーロさんはみんなから“ネネ”と呼ばれています。現在33歳で、身長195cm、体重112kgと体格の良いネネさんはファンの方たちからよく選手と間違えられます。それもそのはず。通訳としてホークスに入団するまでは最速153キロの豪腕ピッチャーでした。

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 ネネさんはドミニカ共和国出身で、カープアカデミーを経て2010~2011年まで広島東洋カープで育成選手としてプレー。ただ、支配下登録には至らず、1軍でプレーする夢は叶いませんでした。その後は独立リーグの高知ファイティングドッグスや愛媛マンダリンパイレーツでプレー。2016年には故郷のドミニカに帰国し同地リーグで、選手として花開くため最後のチャンスにかけていた時に、ホークスから通訳の話が来たのです。悩んだ末、現役生活に未練はあったものの通訳として新しい道に進むことを決断したネネさんは再び日本にやって来ました。そして、コラス選手の通訳になりました。

 正直、就任したばかりの頃は、通訳ながら日本語を忘れることも度々ありました(笑)。コラス選手への初インタビューをお願いした時のことは今でも忘れません。

「私は……えっと………です!」と一番大事な部分を通訳しそびれてしまったり、試合の活躍選手がファンの前でひとことスピーチをする若鷹スピーチでは、コラス選手以上に緊張してマイクを持ってシドロモドロ……なんてこともありました(笑)。

 そんなところも含めて、みんなにいじられ、愛されるネネさんは、言葉以上に心の面でコラス選手と日本人選手や首脳陣との懸け橋になっていきました。

 ネネさん無しには、今のコラス選手の活躍はないと言っても過言ではないと感じます。今ではコラス選手も日本語を覚え、通訳の機会も減っているからなのか、コラス選手に「俺の方が日本語が上手」だといじられる次第です(笑)。

 小川2軍監督は「ゲレーロは優秀だし性格も良いから、もっと野球を覚えてくれたらね」と元選手であることも踏まえ、もはや言葉の通訳のみならず、首脳陣の言いたいことを感じて伝えられるような“スーパー通訳”になれる存在だと期待しています。

 選手経験もあり、打撃投手などの練習サポートもできて、気が利いて、みんなに愛されるネネさんのような通訳は、他にいないのではないでしょうか。

 コラス選手の更なるレベルアップに加え、ネネさんも小川監督の言うようなスーパー通訳になることができれば、2人の夢は現実へと近付くはずです。

 コラス選手の夢は、もちろん「イチグン!」。

 ネネさんの夢は、「コラスと1軍でヒーローインタビュー」。

 コラス選手は支配下登録を勝ち取り、1軍でプレーする夢へと突き進みます。ネネさんは、自分が選手として叶えられなかった1軍の舞台にコラス選手が立てるよう、全力でサポートします。そして……

「コラスに1軍上がってもらって、一緒にヒーローインタビュー出たいデス」

 いつも謙虚なネネさんが、大きな夢に言葉を強くしました。

「……1回でもいいカラ」

 って、やっぱり謙虚(笑)。1回と言わず、何度も2人で最高の景色を見て欲しいです。そしてネネさんもその変わらぬキャラクターで、愛嬌たっぷりな声を大観衆に届ける姿を見せて欲しいです。

「私は身体は大きいデスケド、心臓は小さいから……嬉しさと緊張で泣いてしまうかもシレナイデスネ」と照れるネネさんの笑顔が輝いていました。

 二人三脚で夢を叶える姿が見られる日は、そう遠くないかもしれません。

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