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いつもがむしゃら、みんなに笑顔……ファイターズに杉谷拳士選手がいる幸せ

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/09/21
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荒んだ気持ちを和らげてくれたパフォーマンス

 9月16日、祝日デーゲーム。ファイターズは今年最後の道内地方試合を旭川でホークスと戦った。この日は試合が始まってから雨が強くなり8回表に降雨コールドでファイターズは勝利をあげた。試合後、最後まで雨の中で応援してくれたファンにパフォーマンスを見せたのが杉谷選手だった。

 今季限りで引退する先輩・田中賢介選手のユニフォームを着て「偽けんすけ」として濡れたグラウンドに水しぶきを存分にあげてのヘッドスライディング。ファンもベンチも、サプライズされた賢介選手も大いに笑った。賢介選手とファンへの感謝の気持ちを杉谷選手らしく表現したシーンだった。そういえば、“デッドボールが当たった、当たった!”と伝説の達川光男さんなみにアピールして主審に「NO!!」と突っぱねられた試合もこの旭川だったっけ。思い出すだけで口元が緩む。

 あの日、もうファイターズには自力優勝の可能性も2位の可能性も消えていた。あんなに調子のよかった7月から急降下、8月は5勝しか出来なかった。チームの成績に気持ちを荒立てるファンは当然いる。あのパフォーマンスはその荒んだ気持ちも和らげてくれた気がする。

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 笑顔のないところに笑顔を運ぶ。笑顔があるところにはもっと大きな笑顔を運ぶ。どんな時も杉谷選手はチームとファンに寄り添ってくれている。

 残りの試合、どんな場面で杉谷選手がコールされるだろう。期待通りの活躍をしてくれたら、精一杯の拍手と声援を送ろう。“おっと、そうじゃなくて……”の時は、遠慮なく、ふか~くため息をつこう。このため息だって杉谷選手からのギフト。この世の終わりかと思うくらいに肩を落とす杉谷選手に、切り替えのチャンスを貰う。そこまで落ちてる人を責め立てるほど私たちは人が悪くないし、時間もない。

 杉谷拳士選手がいる。彼のいろいろな表情を思い浮かべながら噛みしめる。私たちはなんて幸せなファンなんだろう。

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