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日韓関係もオリックスも“厳しい冬”へ 引退・岸田護に伝えたい感謝の気持ち

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/09/22
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スタンドで見る以上に遥かにイケメンだった岸田護

今季限りでの現役引退を発表した岸田護 ©時事通信社

 岸田は2005年の大学生・社会人ドラフトで3位指名され、2006年入団。この年の大学生・社会人ドラフト1位は現在アリゾナ・ダイヤモンドバックスに所属する平野佳寿、高校生ドラフト1位はT-岡田だから、オリックスにとっては当たり年だったことになる。多くのファンが鮮烈に覚えているのは、先発投手として二桁勝利を果たした2009年と、抑えとして33セーブを挙げた2011年の活躍だろう。通算成績は44勝30敗63ホールド63セーブ。この数字をどう見るかは人によって異なるだろうが、例えば同じ時期に現役生活を送った、金子や平野と比べると、目立つ数字とは言えない。2013年以降は故障に苦しみ1軍と2軍を往復する日々を送っていた岸田の全盛期は、その長い現役生活に比して、決して長いものとは言えなかった。

 とはいえ、岸田はオリックスファンにとっては「それ以上」の存在であった。シーズン終了後のファンフェスでは常に「盛り上げ役」として、中心的役割を果たし、若干滑り気味ながらも巧みな話術で、スタンドを何度も沸かせてきた。キャンプでのファン対応が丁寧なことでも有名であり、サインをねだるタイミングを計りかねて逡巡する子供達に、笑顔で自ら手を差し伸べる姿は、はたで見ていても見事だというしかなかった。筆者の記憶が正しければ、我が家の娘たちが最初にキャンプでサインを書いてもらったのも岸田であったはずであり、未だ幼かった子供たちが無邪気に喜ぶ姿は今でも鮮明に覚えている。キャンプではファンに囲まれて困っている若手選手に、自ら進んで代わってサインをしてみせる場面もあり、こういうベテラン選手がいると若手は本当に頼もしいだろうな、と思わせる場面も多かった。謎の「イケメン球団」的な営業を展開するオリックスであるが、間近で見る岸田はスタンドで見る以上に遥かに本当に「イケメン」だった。顔が良いのはもちろんとして、野球選手としてまた人間として、格好いい。50代を過ぎた筆者ですら「あんな大人になりかった」と思うほどである。

 そして何よりも岸田は入団から引退の日まで、オリックスに在籍してくれた。チームの不振もあり、FAやトレード、さらには自由契約になりチームを去る選手が多い中、岸田の姿は常にチームにあり、一軍でも二軍でもファンを暖かく迎えてくれた。岸田、本当にありがとう。そして長い間、ご苦労さん。また娘たちを連れて行くから、キャンプで会えるといいな。

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