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『タバコの火を押し付けて』

喫煙所の名物ともいえる焦げ付き馬券

 以前日本ダービーのハズレ馬券を紹介した際にも取り上げたように、喫煙所に捨て去られた馬券の一部はこのように焦げ付いた状態で発見される。しかし、今回の馬券はより強い憤りが感じられた。というのも、今回の馬券は明確な意思を持って馬番号の印字された箇所に火を押し付けているのだ。焦げつき方を見ても、ちょんと当てただけではなく、ジワジワと炙るようにして馬番号を見えなくしている。よほど悔しかったのだろうか。

 ちなみに、角度を微妙に変えながら見てみると「11」という数字が辛うじて見えた。相手に買っていた馬は、スタートで後手を踏んでしまったにもかかわらず5着に入線したキセキだった。

『勝負師の馬券』

「たられば」は禁物だが……

 最終レースも終わり、人もまばらになっていた芝スタンド脇。雨で濡れ、雑踏により踏み固められたその馬券を観察した瞬間、思わず唸ってしまった。魂の込められた三連単一点勝負、6→7→10の買い目に5,000円。

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 惜しい。あまりにも惜しい。冒頭でも紹介したとおり、このレースは6→10→7で決着したのだ。競馬において「たられば」は禁物だが、もしも三連複にしていたら払い戻しは537,500円……もしも2着と3着を逆にマークしていれば2,893,000円……もしも買い目通りに決着していれば3,625,500円……最後の100m、7番ワールドプレミアが10番サートゥルナーリアを剛脚で追い詰めていただけに、その悔しさは推して知るべしだ。

 捨て去られていた跡から察するに、これ以外の馬券を購入していたことが考えづらいが、なんとかこの馬券の購入者が三連複を抑えていてほしい。絶望し、無気力に膝から崩れ落ちる姿が容易に想像できてしまっただけに、そう思わずにはいられない勝負師の馬券だ。

そしてまた競馬は続く

 こうして各々が夢を託した年末の祭典も終わり、今年の競馬も一段落。というわけで、皆さまどうか良いお年をお迎えください……とはいかせてくれないのがJRAの粋な(?)計らい。今年は年内にもう1日開催日が用意されている。しかもG1競走ホープフルステークス。有馬記念で今年の競馬が終わりを迎えるというような情緒こそないものの、気持ちよく新年を迎えるために、もうひと頑張りといこう。

 有馬記念はなんとか的中したものの、その他のレースで散々痛い目を見た私も、令和元年有終の美を飾るべく、場外馬券場へと向かう。来週も駄目なら、また来週。それでも駄目なら、そのまた来週……そこに競馬があるかぎり、ほどよく馬券を楽しみ続ける。