2016年生まれのサラブレッド7,071頭の頂点に立ったのはロジャーバローズ。
18頭立ての12番人気という伏兵ながら、圧倒的な支持(単勝オッズ1.6倍)を受けたサートゥルナーリアに3馬身の差をつけ、最後は3番人気のダノンキングリーに追いすがられながらも、追撃をクビ差しのいだ。
2016年11月20日、浜中俊騎手がミッキーアイルでマイルCSを制した日に亡くなった祖父・飯田幸照さんは「わしが死ぬまでにダービーを勝ってくれ」と何度も言い、ジョッキーへの道に導いてくれた恩師だった。そんな祖父に向け、ダービー勝利後のインタビューで「必ず見ていてくれたと思う」と声を上ずらせながら答えた浜中騎手は大粒の涙をぬぐって空を見上げた。活字にすると月並みになってしまうが、感動的な勝利騎手インタビューに違いなかった。
日本ダービーの勝ち馬としては異例
栄光を手にした人馬が居るとき、その背後にはいつも敗れた人馬が存在する。同様に、レースが決着したとき、その結果の裏側には必ずハズレ馬券が存在する。決着の瞬間の競馬場内は、狂騒と呆然が半々といった具合でどよめいていた。
1着:1枠1番 ロジャーバローズ
2着:4枠7番 ダノンキングリー
3着:7枠13番 ヴェロックス
2、3着馬に上位人気の馬が入着したこともあり、三連系馬券の払い戻しはさほどでもないが、勝ち馬の単勝払戻オッズは93.1倍。馬連ですら万馬券となっている。日本ダービーにおいて、重賞未勝利馬が勝利を収めるのは23年ぶりであり、波乱の結果だ。すなわち、それだけ馬券を外した人が多いということでもある。
レースが決着したとき、結果の背後には必ずハズレ馬券が存在すると書いたが、結果が波乱であればあるほど、そのハズレ馬券の数は増えるもの。日本ダービー直後も、競馬場の床にはハズレ馬券が散乱していた。日常から切り離された空間で、夢を見て破れた跡があった。ハズレ馬券が、その人の一抹の希望、そして絶望が落ちていた。
それを手に取り、眺める。興味深いものが多くある。この人は一体どんな気持ちで馬券を買って、どんな気持ちでレースを眺めていたのだろうかと類推する……。