『逡巡の果ての大勝負』
競馬場からの帰り道。東京競馬場東門そばの駐輪場にて発見・観察。3枚の馬券がふたつに折り曲げて捨てられており、そのうちの2枚がこれだった。
2019年5月20日に公開されたスポーツ7紙日本ダービー徹底討論会の中で、サンケイスポーツの内海記者が「みんながサートゥルナーリアだとこの企画は成り立たないので……」と前置きを置いたうえで予想を述べるほど、レース前はサートゥルナーリアを本命視する声が大きく、「ディープインパクト以来となる無敗のダービー馬誕生か」とまで持て囃された。最終的な人気も単勝オッズ1.6倍の支持率だっただけに、単勝馬券を40,000円も購入したこの方の気持ちもよくわかる。
しかし、注目したいのは馬券下部の通し番号だ。正確には解読できていないものの、右下の6桁の番号が発券機番号で、その左にある8桁の番号が発券番号であることは間違いない(そのため、ここで紹介している馬券の発券番号は連続しているものがほとんど、つまり1人の人が連続して馬券を購入していることが読み取れる)ことまではわかっている。
そこで、このサートゥルナーリアの単勝馬券を見てみると……それぞれの馬券に印字された発券機番号・発券番号に関連性が見受けられない! つまり、これは一方の単勝20,000円分の馬券を購入した後に、購入者が逡巡し、思い切ってさらに単勝20,000円分の馬券を購入しているものなのだ。同じ場所に捨て去られているにも関わらず、購入したタイミングは異なる。
「せめてあの買い足しがなければ……」そう思っているに違いないだろう
『運に全てを委ねる』
『逡巡の果ての大勝負』と題して紹介したのは、東門付近の駐輪場に折り曲げて捨てられていた3枚のうちの2枚の馬券についてだった。
ここで紹介する馬券は残された1枚だ。逡巡に逡巡を重ねて追加購入したであろう日本ダービー40,000円勝負に撃沈し、残された最終レースで購入したのは、自動的にコンピューターで選んだ馬番で馬券を購入するクイックピック投票。三連単のクイックピック投票は「この馬は来る」と考えた馬を手動で選ぶこともできるのだが、その選択すら最終的に放棄してしまった。逡巡の果てのショックは相当なものだったことがわかる。
ハズレたからといって……
3歳春に行われる日本ダービー。馬生において、一度しか挑戦できないレースということもあり、その栄光は「ダービー馬のオーナーになることは、一国の宰相になるよりも難しい」と伝えられ続けてきた。
しかし、競走馬の一生を考えると“これから”の方がずっと長い。ここで駄目だったからといって、ダービーで負けた馬が競走生活を終えるわけではない。同様にダービーを外してしまった競馬ファンの希望もここで潰えるわけではない。
数多のハズレ馬券を観察しつつ、自身もボロボロに敗れた私はそんなことを考えながら競馬場を後にしていた。来週には豪華メンバーが集結する安田記念が控えている。