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「在留ネパール人の激増」が追い風に

 その甲斐あって次第に『モモ』にはお客が集まり出し、同胞のネパール人以外にも、ネパール滞在経験のある日本人や新しいもの好きの日本人などで賑わうようになる。

 さらに世にも珍しいネパール料理専門店ということで、雑誌やテレビでもよく取り上げられ、2015年頃には満席が続くほどに忙しくなったという。結果的に日本人客の割合は、全体の3~4割にものぼった。

現在『バラヒ』と『モモ』は、同じビルの1・2階にある。(筆者提供)

「在留ネパール人の激増」という、折からの“追い風”も吹いた。法務省の統計によると、2008年に1万2286人だった日本在留ネパール人は、2019年には9万6824人まで増えている。新大久保のある新宿区の住民基本台帳を見ても、08年に565人だった新宿区の在留ネパール人は、2019年には2952人まで増えている。※

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※全て、その年の12月時点の数字

 在留ネパール人急増の大きな要因に挙げられるのが、2011年の東日本大震災だった。もともと新宿や新大久保界隈には外国人専門学校が多くあったが、震災により中国や韓国の在日留学生の多くが帰国。代わりに日本語学校は、日本への留学生の送り出しに力を入れていたネパールの学生を積極的に呼び込んだ。

 それを下支えしたのが、2008年に日本政府が打ち出した「外国人留学生30万人計画」だった。これに伴う外国人ビザの緩和で、多くの外国人留学生に門戸が広がった。加えてビザの緩和は結果的に、飲食店シェフなど技能ビザで来日する出稼ぎネパール人の数も大きく増やすことになった。

2018年にはネパール料理店が30を超える

『モモ』の大成功に刺激されたのか、新大久保には次第に『モモ』以外にもネパール料理専門店が現れるようになっていく。『モモ』のメニューを踏襲したり、『モモ』から従業員を引き抜くケースも少なからずあったという。

 そして2015年頃よりネパール料理専門店の数は激増し、2018年には30を超えるまでになる。その後現在まで、多くの店で閉店や新規開店、オーナーチェンジがありつつも、店数はほぼ横ばいのまま推移している。

「多くのネパール人が、『あ、インド料理ではなくネパール料理を出してもやっていけるんだ!』と気づいた。それが、30軒という数字に表れているのではないでしょうか」

ギミレさん

 とはいえ1つの街にこれだけ同種の店がひしめき合えば、当然、競争は激化する。

「もちろん、店が増えたことの影響は大きいです。価格競争も激しく、うちも含めどこも経営はなかなか大変ではないでしょうか。コロナ禍も痛手となっています」