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蟹座生まれのヤクルト・坂口智隆と原樹理…後半戦のキーマンが三輪広報に語ったこと

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/07/04
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戸田に行くと声をかけてきたあの男

 さて、1軍は公式戦はありませんが、ファームは基本的に中断なく試合が続きます。この期間、ファームの選手にとっては1軍の公式戦再開後を見据えての「雌伏の時」であり「勝負の時」となります。

 このあいだ、久しぶりに戸田に行くと、あの男が僕を見つけてこう言いました。

「マーシ―(正義)、もう俺のこと(コラムで)言ってくれへんくなったわ~」

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 そう、ボヤキの主は7月7日“七夕生まれの男”坂口智隆(誕生日おめでとう! 6日の今浪もおめでとう)。開幕カード阪神戦の3戦目、野村克也さん追悼試合で自打球を膝に当て翌日登録抹消。2年前の開幕同カードで死球を受け、左手親指を骨折した悪夢が脳裏をよぎりましたが、1か月後にはファームで元気に復帰。目下、満塁ホームランや先頭打者ホームラン、盗塁を決めたりと好調のようですが、現在まで1軍復帰を果たしていません。

 以前にも触れましたが、彼はああ見えて真面目に野球に取り組む男。この2か月間、2軍だろうが1軍だろうが関係なく、自分のやるべきこと、与えられた役割を黙々とこなしています。「あぁ、触れてくれなくなったな~」と口ではネガティブなことを言いますが、心は燃えています。後半戦、大詰めでの彼の経験は絶対に必要です。僕らは、後半戦からの坂口智隆の神宮凱旋を待っています。

坂口智隆 ©時事通信社

 そして、もうひとり。戸田で虎視眈々と1軍復帰を目指している男がいます。

「三輪さんのおかげでバントできるようになったんで……師匠ついていきます!」

 僕にはいささか調子のいいことを言いがちな、原樹理です。

 今年は開幕1軍を期待されて、ここまで登板なし。ファームでは、同じく6年目の高橋奎二とともに規定投球回数をクリアしているものの、高橋は1軍に昇格し、いきなり2連勝。一方の樹理はファームで6月まで5敗と明暗が分かれていました。

 彼も故障からの完全復帰を目指す身。高橋奎二と同じく、素晴らしい直球を操る豪腕です。昨年も、リハビリでの厳しいトレーニングに黙々と取り組む姿を見かけました。人一倍責任感が強いタイプだと僕は分析しているのですが、僕に最初に声をかけてきたのもきっとそのせいです。現役時代おっさん野手と若手投手は言葉を交わすことは少ないのですが、「バントを教えてほしい」と言ってきたときのことを覚えています。“バントが上手くなって勝ちを手繰り寄せたい”、そんな気持ちがひしひしと伝わってきて、嬉しくなったのを覚えています。

「バント」というツールをきっかけにいろいろと話す関係になった樹理と僕。僕が現役を退いてもなおアドバイスを求めてくることも。ファームは中断がないので悔しい時間が続いてしまうかもしれないけど、1軍の先発陣は潤沢になったと傍目には映るけど、まだまだ足りない。チャンスは必ず巡って来ます。僕は樹理の力なくしてはスワローズの優勝はないと思っています。

 7月1日のファーム楽天戦では115球、7安打完投勝利というニュースも入ってきました。戸田に行けば顔が浮かび、向こうも声をかけてくれる。時節柄、あんまり積もる話はできないけど、その言葉に復活の兆しを感じています。誕生日を迎える蟹座の2人(坂口智隆7/7、原樹理7/19)は、間違いなく後半戦のキーマンです。

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