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2018年の“覚醒”

 ストレート頼みになっていたピッチングを反省して、オフのうちから変化球の精度を上げることに取り組み、“夏バテ”による調子の波をなくすため、食事の量を増やすことにもトライした。そして迎えた2018年、石山はついに“覚醒”する。

 開幕の時点ではセットアッパーだったが、4月下旬から新守護神に抜擢されると、リーグ2位の35セーブをマーク。これは球団歴代でもトニー・バーネットの41セーブ、高津臣吾(現監督)、五十嵐亮太、石井弘寿(現投手コーチ)の37セーブに次ぐ5位タイの記録で、抑えとして大きな花を咲かせた石山の年俸は1億円の大台に乗った。

 2019年は5月に上半身のコンディション不良、7月にはインフルエンザと2度の長期離脱があり、一度は“大台”に達した年俸は2000万円ダウン。だが、コロナ禍による変則シーズンとなった2020年はリーグ3位の20セーブを記録し、オフには出来高も含めると総額7億円と言われる4年契約を結んだ。ところが新たなシーズンに待ち受けていたのは、クローザーになってから初めての試練だった──。

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 6月20日に登録を抹消された石山が取り組んだのは、ピッチングよりもトレーニング。毎日のように試合があり、登板の可能性もある一軍ではなかなか自分の体を追い込むことはできなかったが、ファームではまず下半身を中心としたウエートなどのトレーニングにじっくりと取り組んだ。

 “土台”となる部分を見つめ直すと、6月30日の楽天戦(森林どり泉)、7月6日のDeNA戦(戸田)とイースタン・リーグで2試合に登板。DeNA戦では150キロを超えるストレートで2つの三振を奪うなど、打者3人をピシャリと抑え、前半戦終了を前に一軍復帰を果たした。

復帰戦はプロ初登板と同じ「2点ビハインドの7回」

 7月10日の復帰戦、石山が上がったのは奇しくも8年前のプロ初登板と同じく、2点を追う7回のマウンドである。抹消前は「打者の反応を見てもファウルが取れない、空振りが取れないというのがあったので、スピードガン以上にキレのある球が必要かなと思っていました」というが、この日は140キロ台後半のストレートでファウルも空振りも取った。ここでも打者3人をピシャリと抑え、高津監督も「真っすぐに関しては良かったかな。力はあったと思います」とうなずいた。

 現在は石山の“代役”を務めるスコット・マクガフがリーグ3位の16セーブを挙げるなど、しっかりと役割を果たしており、石山自身も「まずは結果を出して、チームの力になるのが一番大事。何とか結果だけ出したいです」と、ポジションにこだわるそぶりはない。それでも理想は、開幕前から高津監督が思い描いていたように、マクガフや清水昇がセットアッパーとして抑えの石山に繋ぐ“方程式”だろう。

 「石山本願寺」の理由を近藤一樹は……

「辛抱強いというか、粘り強いというか……。たとえば審判さんとの相性が悪くて、四隅に投げてもボールになって『ストライクでもいいのにな』っていうところでも、辛抱強くストライクを取ってくれるまで投げれるコントロールもあるし、粘り強さもある。それができるんで、クローザーで成功しているのかなっていうふうに思います」

 2018年には抑えの石山に繋ぐセットアッパーとして42ホールドを挙げ、最優秀中継ぎ投手に輝いた近藤一樹(現四国アイランドリーグplus香川選手兼投手コーチ)は、ファンから「石山本願寺」と呼ばれる守護神を、そう評したことがある。

 1カ月のペナントレース中断期間を経て、8月14日に始まるシーズン後半戦。中継ぎでのスタートになるかもしれないが、持ち前の辛抱強さ、粘り強さを身上に、石山は逆境も力に変えて必ず戻るはずだ。『夢色傘』を携えて、約束の場所へ──。

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