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前半戦の併殺打わずか「1」 元オリックス・葛城育郎が注目するT-岡田の“覚悟”

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/07/20

併殺数「1」があらわしているもの

 数字的に見ても1つ彼の変化が分かる数字があります。それは併殺打の数です。(前半戦終了時)打席数245で僅か「1」なのです。本来はホームランバッターなので三振やフライアウトは多くゴロアウトは少ないとはいえ試合数を半分消化している段階で「1」というのは素晴らしい数字です。パ・リーグで規定打席以上の選手でも「1」は日本ハムの西川遥輝と楽天の小深田大翔のわずか2人だけ。もちろん、併殺打には複数の要素が加味されますが、決して足が速いとは言えないT-岡田がこれだけ併殺が少ないということは、全力で一塁まで駆け抜けていることのあらわれなのだろうと思います。

 この全力疾走こそが大事な姿なのです。チームの勝利の為、1点を取る為にできる精一杯のプレーをする。その姿そのものがチーム全体の士気を高めるのです。野手最年長の選手のその姿こそが今年のオリックスの強さの象徴ではないでしょうか。

 機動力といえば盗塁やヒットエンドラン、打球判断での好走塁。確かに走力がなければ出来ないことではありますが、“走力がなくても出来る機動力”こそがチームを勝利に導く大きなカギなのだと思います。

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 さて、ここまではT-岡田選手についてピックアップしてきましたが、オリックスの攻撃陣全体を見てみても、故障者も少なく選手層の厚さを感じます。内野ではサードに宗佑磨選手を固定出来ていることが大きいですね。彼もこれまでくすぶっていた選手の一人でしたが、今季はここまでほぼ全試合に出場し2番という打順で機能しています。

 そして、攻撃陣の核である吉田正尚選手はさすが安定の成績を残していますね。ただ、今年の打撃陣が昨年までと違うのは、吉田選手一人で背負うしかなかった負担や重圧を、今年はカバーする選手がいるということ。打点、本塁打とも吉田選手と比較しても遜色ない成績を残している杉本裕太郎選手。そして、T-岡田選手の存在が全ての相乗効果となりうまく嚙み合っていると思います。

 テレビ中継を観ていても雰囲気がすごくいいですね。ベンチの首脳陣からも明るさが見て取れるように、以前のように暗く沈み込むことがあまりないように思います。後半戦も11連勝した時のように良い波に乗れば、ますます勝ちを重ねることが出来るのではないでしょうか。そして25年ぶりとなるリーグ優勝を、オリックスのOBの1人として期待しています。

オリックス時代の筆者 ©葛城育郎

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