中田は巨人でどんな顔を見せるのか
それでも、中田の選手生命がつながれたことに安堵せずにはいられない。突き付けられた“イエローカード”をどう受け止め、次に生かせるかは本人次第だ。
そして、新たな環境で中田の打者としての道がさらに開かれる可能性もある。14年目に達したとはいえ、中田が潜在能力の底を見せたとは思えない。大阪桐蔭時代の中田以上に爆発的なインパクトの高校生打者をその後も見た記憶はない。あの才能を思えば、自己最多の本塁打数が31本(2020年)というのは物足りなく映ってしまう。
さらに、昨年の中田は明らかに進化を見せていた。かつて力任せに見えたフルスイングは影を潜め、力感のないスイングで飛距離を伸ばす。その姿は、ルーキー時代の中田が憧れのまなざしで見ていた稲葉のロングティーに重なった。
巨人に移籍したことで、中田は坂本勇人、丸佳浩、岡本和真とチームメートになる。年上、同級生、年下の豊かな才能を目の当たりにした時、中田はどんな顔を見せるのか。彼らのスイングを、13年前のような純真な表情で眺める姿が見られるだろうか。
記者会見中、中田は自身の行動を「愚かな行為だった」と謝罪したという。当然のことながら、暴力は許されない行為だ。
だが、過ちを悔い、新しい環境で輝きを取り戻す中田の姿を待つ日本ハムファンだっているはずだ。「どうしようもないヤツに野球をやらせるな」という世界ではなく、「どうしようもないヤツが野球に救われた」という世界であってほしい。中田翔の才能と純真さに惚れたひとりの人間として、そう願わずにはいられない。
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