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「最高の日本シリーズ」が終わっても…スワローズ三輪広報が備える「明日への戦い」

文春野球コラム 日本シリーズ2021

2021/11/28
note

12球団ジュニアトーナメントに向け

 子どもたちとは、どうやって試合に勝つのか? そのためにはどう行動、準備をするかをよく話します。打ったら一塁まで全力で走るは当たり前ですが、歩き方、アップの仕方、ユニフォームの着こなしひとつでも「カッコよくやろう」と口を酸っぱくして言っています。試合中のキャッチボールも軽やかにダッシュしていって、ポジションにつき、そこでキビキビと投げ始めよう、と。それを見て相手はどう思うか。細かいことですが、そうした意識って、試合にも繋がってくると思うんです。

「楽しくやろう」とは伝えますが、「楽しくやるためにはやることをやらなきゃダメなんだよ」ということも同時に伝えます。子どもの野球ですから、当然ミスもたくさん出ます。僕もミスはたくさんしてきたので、子どもたちのミスは絶対に責めませんが、そこに至ったプロセスにおいて油断やぬかりがあれば、次にミスをしないためにはどうしたらいいかを伝えなければなりません。

 子どもたちには「口うるさいおっさんだな」と思われているかもしれません。僕も何度も同じことを言うのは正直しんどい。でも、結局野球って、やるのは自分で、打席やマウンドでは誰も助けてくれないのが現実。一球の重み、ひとつのアウトの大切さ。この意識や考え方の部分をしつこく言うんです。

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「ちっちゃいおっさんが言ってたことってこういうことだったんだ」と思い出してほしい

 この12月末の大会が終われば、この子たちを指導することはできません。彼らが次のステップやレベルに進んだときにちょっとでもいいから思い出してほしいんです。「あぁ、ちっちゃいおっさんが言っていたことってこういうことだったんだな」って。彼らにそういう日が来ることを信じ、種を撒いて、水をあげ続けています。

 大会は暮れも押し迫る12月28日~30日、神宮球場と横浜スタジアムで行われます。ぜひ、そんなジュニアたちに暖かいご声燕をおねがいします。身長174cmの選手を筆頭に、168cmの僕より大きい子がいる、スワローズジュニア。選手を見上げるユニフォーム姿のちっちゃいおっさんもがんばります。

 そうそう、ジュニアトーナメントの前の12月10日に「2021新入団選手発表会」がありますね。実はこの中に、この僕に縁がある選手がいるんです。

今年のドラフト4位、高卒ルーキーとの「縁」

 ドラフト4位指名の小森航大郎。僕と同じ山口県出身の高卒ルーキー(宇部工)です。僕は現役時代毎年オフに、山口県周南市のいくつかの少年団を回って野球教室を開催していたんですが、そのなかの少年団出身で、僕が指導に行ったときにグラウンドにいたのが小森くんなのです。

 小森くんがスワローズに指名されたあと、山口県のさまざまな関係者の方から「小森をよろしく」という連絡がありました。聞けば僕の野球教室に参加していたと。

 自分が野球教室をやっていて、そこにいた子がのちにプロから指名を受けて、そのチームが自分のお世話になっているスワローズだなんて、とんでもない確率のとんでもない「縁」。ただでさえ、プロ野球選手になる人も少ない山口県。この世界に入ってくるだけで、驚きなのに、そんな子がまさか自分の「同僚」になるとは。

ルーキーは挨拶にやってくるのか?

 はたして「新入団選手発表」の当日、小森くんは僕に挨拶に来てくれるのでしょうか。先輩的に自分から声をかけるのもアレだし……つば九郎に「やまぐちでしょ?あいさつは?」などと振られ、思い出したように挨拶に来る“コント”なんて考えたくもない……。

 広報的につい力が入ってしまいましたが、来年から小森くんの映像やインタビューが多かったら「三輪のひいき?」と思っていただいても仕方がありません。なぜなら、彼がプロ野球選手として一日でも早く活躍して、プロ野球選手をなかなか生で見る機会も少ない山口県の子どもたちにユニフォーム姿を見せてほしいからです。そして、僕が始めた小さな活動のバトンを次の世代に渡してほしいのです。

 今年の「文春野球コラム」の執筆はこれで最後になります。「コラム日本シリーズ」では敗戦を喫してしまい、僕も日本シリーズに「大きな忘れ物」をしてしまいました(来年は僕がそれを取りにいく番だ!)。石川さんの力投を見ながらふと、そんなことを考えていたのはここだけの話です。

 一年間おつきあいいただき、ありがとうございました。 三輪正義

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