昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「やっぱり石川雅規さんや石山泰稚には思い入れがある」引退から3年、久古健太郎が語るスワローズへの思い

文春野球コラム 日本シリーズ2021

2021/11/27

心はいつもスワローズとともに

 皆さん、お久しぶりです。元東京ヤクルトスワローズの久古健太郎です。まずは遅まきながら、6年ぶりの優勝、本当におめでとうございます!

 僕は2018年を最後に現役を引退して、現在はコンサルティング会社でサラリーマンとして働いています。ユニフォームを脱いでもう3年になりますが、それでも心はスワローズとともにあります。なので今年の優勝はとても嬉しかったです。それに、一緒に戦った選手や監督・コーチがたくさんいますので、とても思い入れのある優勝になりました。

現在はコンサルティング会社勤務 ©久古健太郎

神宮球場でのビールかけが最高の思い出

 覚えてもらっているかどうか分かりませんが、ヤクルトが前回優勝した2015年、今年で引退した雄平さんのサヨナラヒットで優勝を決めた試合(10月2日阪神戦)で、僕も中継ぎとして投げさせてもらっていました。試合後に神宮のグラウンドで行ったビールかけは、8年間のプロ野球生活でも最高の思い出です。あれを経験できたのは自分の野球人生でもすごく大きかったですし、あの経験があったから悔いなく現役を終えることができたのだと思っています。

 その一方で、個人的には1年間一軍にいたわけではなかったので、何かやり残したような感じもありました。優勝を決めた試合で、サヨナラのホームを踏んだシンゴ(川端慎吾)が泣いているのを見た時に、自分もシーズンを通して一軍で活躍した上で優勝の喜びを味わいたいなと思ったのを覚えています。

現役時代の筆者 ©文藝春秋

6年前の日本シリーズ敗退の借りを返してほしい

 日本シリーズでも、3試合に投げさせてもらいました。初めての舞台でしたが、僕自身はどちらかというと自信を持って臨めていたので、良い緊張感、良いメンタルの状態でマウンドに上がることができていました。相手はソフトバンク。当時は柳田(悠岐)選手がトリプルスリー達成でノリにノッていたのですが、シーズン終盤にデッドボールを当てられた影響で、インコースのボールに対して怖さを持っているように見えました。なのでしっかりインコースに投げることができれば抑える確率は高いと思っていて、そういう意味でも精神的に優位に立てていたと思います。

 ところがソフトバンクはめちゃくちゃ強かったです。結局、1勝するのがやっとで、圧倒されたまま日本シリーズを終えてしまいました。今年はヤクルトにとって、それ以来の日本シリーズ。僕らはあの時にすごく悔しい思いをしているので、今回は相手がオリックスですが、何とかその借りを返してほしいという思いがあります。

正直、今年も優勝は難しいと思っていた

 正直なところ、昨年までの戦いを見ていて今年も優勝は難しいと思っていました。今もプライベートやお付き合いなどで年に4、5回は神宮に足を運びますし、時間がある時はテレビで試合を見ることもありますが、そこまでチームを追えているわけでありません。それでもシーズンが進むにつれて、昨年までとは違うなという印象を持つようになりました。

 たとえばローテーション以外の、いわゆる谷間の先発が投げる試合。今までなら、そこで打たれて負けてしまうことも多かったと思うのですが、今年はその辺りのピッチャーのレベルが上がっていて、しっかり勝ちを拾えていました。中継ぎだったら今野(龍太)君とか、前半だと近藤(弘樹)君がすごく頑張っていて、底上げができているというか、今までとは違う層の厚さみたいなものを感じるようになりました。

 4月の後半ぐらいからはずっとAクラス。ある程度、戦い方もハッキリしてきていたので、6月ぐらいには後半戦もたぶんこのまま落ちることはないだろうなと思うようになっていました。

投手は「勝負しろ」と背中を押してほしい

 高津(臣吾)監督が終盤、ミーティングで言った「絶対大丈夫」という言葉もすごく良かったですよね。動画も見ましたけど、自分がもし選手だったら、マウンドに立ってしんどい時や、緊張する場面などでああいう言葉が1つあるとそれだけで落ち着くし、心のよりどころになるだろうなと思いながら見ていました。

 あと印象に残っているのが、高津さんがピッチャーに「打者と勝負をしろ」と言っていたことです。今まではどちらかというと「フォアボールを出すな」など、ピッチャーにとってはネガティブなワードが出ていて、そこを改善しろと言われることが多かったと思います。もちろん意味としてはどちらも同じだと思うのですが、「勝負しろ」と言われたら、勝負して打たれたらしょうがないという割り切りがピッチャーの中でできます。ある意味、結果を気にせずにやるべきことに集中できるので、その辺りのメンタル的な部分も大きかったのかなと思っています。