伸び代は無限大 恐るべきスピードで成長する田上投手の存在
中でも、田上奏大投手の頑張りは勝手ながら親近感を抱いて励みにしています。プロ2年目の田上投手は、今季1軍デビューを果たした期待の若き右腕です。しかし、彼の経歴はプロ野球選手としては異例。履正社高校時代は外野手としてプレーしてきたものの、投手としての潜在能力を感じた祖父の助言もあり、高3の夏前に投手に転向。練習試合で151キロをマークするなどポテンシャルの高さを見せると、ホークスが下位ながらドラフト本指名。ただ、ポテンシャルはあるけど投手としての経験値は乏しい、チャレンジングなプロ挑戦でもありました。
プロ1年目は投手に慣れることからスタート。たくさん失敗して、上手くいかなくて……でも、彼は常に前向きに黙々と取り組んでいました。ある時、インタビューで「プロに入ってピッチャー挑戦って不安はなかったんですか?」と聞いたことがあります。プロに入って野手転向という例はよくありますが、逆のパターンはなかなかないですよね。でも、彼の答えはこうでした。「不安というよりは、ここからどこまで行けるのかなとワクワクしています」。屈託のない口調で純粋な気持ちが伝わってきて、何だか感動して泣きそうになりました。経験も現時点での実力も劣っているかもしれないけど、伸び代は無限大。むしろ、経験がない分、伸び代は他の投手より大きいはず。田上投手はその言葉どおり、恐るべきスピードで成長しました。
球団の方針で枠も空けなければならなかったこともあり、1年目のオフに育成契約を打診されました。成長するまでもう少し時間がかかると思われたわけです。でも、田上投手はオフの取り組みが春先からグングン目に見えて表れました。育成になってわずか5ヶ月後には再び支配下登録、1軍初登板初先発! 三笠杉彦GMに「フロントの見立て違いだった」とまで言わしめる急成長を見せました。投手経験は他の選手より浅いし、まだ粗さもあるかもしれないけど、誰よりもたっぷりの伸び代は努力次第でグーンと結果に表れるんだと知りました。
私の話に戻りますが、野球歴はチームメイトの誰より劣るけど、自分には未知の伸び代が隠されているんだと信じて、コツコツガツガツやり続ければ、田上投手みたいに……。経験や実力の無さに目を向けるのではなく、まだ見ぬ伸び代に期待してやり続ければ、現状を打破し、常識を覆すことができるかもしれない。彼の躍動が励みになりました。時々ブルペンやマウンドで「私は田上奏大、私は田上奏大」と自分に言い聞かせながら投げています(笑)。
田上投手は4月の1軍デビュー後、心身の疲労もあって、ファームでもなかなか結果が出ずにもがいていましたが、先日2ヶ月半ぶりの白星を掴みました。小久保裕紀2軍監督は、苦しんでいた田上投手に対して「彼には乗り越える力がある」と常々話していました。当の田上投手も落ち込む姿など全く見せず、黙々とやり続けていました。取り組む姿勢や気持ちの強さ、見ていて応援したくなる姿、私にとってそれは希望の光でした。
さて、九州ハニーズはホークスの妹分を目指して誕生した女子硬式野球チームです。ホークスの強さや活躍は我々の励みであり、憧れの存在です。これからもそんなホークスの魅力を取材し続け、九州ハニーズのパワーに還元するべく橋渡しが出来るプレイングライターとして奮闘したいと思います。ホークスと共に九州ハニーズのことも応援して頂けると嬉しいです。
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