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チームのバランスを取る選手は野手の中にも存在

 チームが苦境の時、絶妙にバランスを取り勢いづけてくれる選手は野手の中にも存在します。当たり前と思われるかもしれませんがキャプテンの佐野恵太選手。キャンプ中からシーズン直前まで右わき腹を痛め、5月に2週間ほど椎間関節炎で一軍を離れたことを忘れてしまうほど、安定した活躍を続けています。

 思えば、今シーズン、レフトに加え3年ぶりのファーストにも取り組んだことで、ソト選手の右手首の張りによる出遅れや、その後の不調もカバー。終盤守備固めの布陣でも大事なオプションです。ファーストについて佐野選手は「バッテリーにも近いし、新鮮な視点。違った角度からも気づいたことを伝えられる場合も」と前向きです。

 さらに交流戦では三浦大輔監督から「打順の役割に収まろうとせずに佐野らしくあればいい。盗塁をしろとは言わないから」と伝えられ、プロに入って初めて経験する一番に。周囲の驚きを物ともせず、一番を打った交流戦を通して打率はチームトップの.333、ホームラン4本、打点も13と見事な結果。

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 チームがその都度必要とする打順やポジションに対応し期待以上の結果を出すことで、蝦名達夫選手をはじめとする若手の台頭のチャンスを見事に生み出す。さらには桑原将志選手の復調も待つことができました。

 ムードメーカーの役割も果たしながら、牧秀悟選手を筆頭に最前線の若きチームメイトが存分に力を出せる場を支えていく。その一方で自身の数字も残す。佐野選手がチームにもたらすバランスはとてつもなく高いレベルです。

佐野恵太 ©tvk

 優勝へのマジックナンバーが灯った首位スワローズの背中がはるか先にあり、ベイスターズは負け越しが減らない現状ですが、順位を上げる可能性は揃いつつあります。真夏の連戦で疲れが見え隠れする頃には一軍に戻る準備を重ねている三嶋一輝投手や砂田毅樹投手もブルペン陣に加わり、肘の痛みが癒えて既にファームで打席に立っているオースティン選手も遠からず横浜スタジアムで力強い打球を放ってくれるはず。

 これから拡充していくチームでも、見事にバランスを生み出し、背中を押してくれるだろう田中健二朗投手や佐野選手の様な存在がベイスターズにはある。去年スワローズの高津監督が発した「絶対」とまでは言い切りませんが、「ベイスターズは、きっと大丈夫」と確かに思えるのです。

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