2022年シーズン、マリーンズは5位で終わった。苦しい1年の中、光を放ち続けた男がいる。プロ3年目の髙部瑛斗外野手、24歳だ。137試合に出場しチームトップの打率.274を記録。安打数はリーグ2位の148本(1位はイーグルス・島内選手の161本)。そして44盗塁で盗塁王に輝いた。昨年までの2年間で通算38試合に出場して9安打、4盗塁。昨年1年だけで5度の二軍落ちを経験した男が見事にレギュラーに定着し、オールスターに名を連ねる選手となった。
リードオフマンとして確かな手ごたえをつかんだ日
「後がない気持ち。今年ダメだったら終わりなんじゃないかなという気持ちで春のキャンプをスタートした。そういう気持ちがこのシーズンに繋がったのかなと思っています」
長いペナントレースを終えた髙部は満足そうに振り返った。マリーンズ不動の一番打者・荻野貴司が怪我で出遅れたことで3月25日、仙台でのイーグルスとの開幕戦では一番に抜擢された。切り込み隊長となる一番打者が出塁し足でかき回し、得点を重ねていくのがマリーンズの攻撃スタイル。その大事な起点を任された。
「自分のできる以上のことはできない。だから、自分のやれることを精一杯やろうと考えました。やれることをやる。シンプルに考えました」と髙部。それが今年の髙部が行き着いた境地だった。
いきなり2安打で開幕戦勝利に貢献をすると、4月3日のライオンズ戦(ZOZOマリン)で今季初盗塁をマーク。5月13日のバファローズ戦(京セラドーム)では3盗塁をマークし2桁盗塁に乗せた。
このバファローズ戦はリードオフマンとして確かな手ごたえをつかんだ日ともなった。レフトでスタメン出場すると初回にセンター前にヒットを放ち、二盗に成功。犠飛で先制のホームを踏んだ。3回の第2打席では四球で出塁。すかさず二塁を陥れ、盗塁に成功をすると三番・中村奨吾の一塁線を破るヒットでホームに還ってきた。5回にも左前打。8回にも四球を選ぶと、二盗。その後、三塁まで進むとスクイズでホームイン。2安打2四球3盗塁の大活躍を見せた。
「自分のやるべきことはこういうことだと見えてきた試合。自信が芽生えた」と振り返るように、この試合の活躍でマリーンズの新切り込み隊長として、その名も野球ファンの間で広く知れ渡るようになっていった。