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“神”からのLINE「好きな野球で悩めるのはいいこと」

 石川昂にとっての「神」、それは、カブス・鈴木誠也だ。同じ用具メーカーを使っていた縁もあり、21年1月に沖縄で自主トレをお願いした。

 尊敬しすぎて頻繁にLINEを送信できる存在ではないが、報告や悩みごとがあれば、長文でおそるおそる送信ボタンを押す。昨年4月に自分の打撃を見失ったときには「今、野球をやってて一番悩んでいます」と告白。すると「好きな野球で悩めることはいいことだよ」と、メンタル面、技術面と石川昂を超える長文でアドバイスを返してくれた。

 鈴木自身も足首骨折の大けがから復活したとき、今の自分に何ができるかを考えて、野球に必要となる筋肉をつけて体を大きくし、シーズンを戦える基礎を作り上げた。取材中、石川昂に「リハビリ中、何か支えになったことってある?」と聞くと「トレーニング」と断言。一心不乱に体を強くして、一時は過去最高の体重となる105キロまで大きくなった。「ただ大きくすりゃいいってもんじゃないんで。今年に入ってからスピードも追い求めています」。そう語る大砲は自信にみなぎっている。

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 今回のWBCで鈴木は、左脇腹の痛みで無念の出場辞退となった。そんな中、侍ジャパンのベンチには背番号51のユニホームが掲げられ、ともに戦っている。

 石川昂にとっても、侍ジャパンのトップチームは憧れだ。数年後に行われる第6回のWBCにも「絶対、出たい」と即答する。そして、こう続けた。

「究極の理想ですけど……誠也さんと一緒に次のWBCに出たい。一緒に同じユニホームを着て、プレーできたら最高ですよね。でもそのためには、まずドラゴンズで不動のレギュラーになって(広島が3連覇したときの)誠也さんのようにコンスタントに高い数字を残してチームを優勝させないといけない」

 プロ入りしたときに掲げた目標は「三冠王」。今もブレることはない。主軸として、今後のチームを引っ張る覚悟を堂々と言い切る。

 今季から背番号を2から25へと変更した。元々、背番号2をつけていた荒木コーチが「俺が運をつかっちゃったからなぁ」と冗談交じりで話していたが、けがが続いていたこともあり、石川昂自身も心機一転を臨んでいた。

 立浪監督からどんな番号がいいかを聞かれ、尊敬する鈴木も背負った「51」を一度は希望しかけたが、長距離砲イメージがついた「25」を自身に重ね合わせ、最終的に25番を選択した。「どう? 似合ってる? この番号を自分のものにしたい」とお気に入りだ。

もう一つの夢、最高の仲間でありライバルとお立ち台

 絶対的4番への道のりで仲間と果たしたい夢もある。ドラフトで一緒に入団した岡林勇希、竹内龍臣の高卒3人組でお立ち台に立つことだ。

左から石川昂、竹内、岡林

 2月のキャンプ中には、初めて高卒組3人がそろった同期会も開催された。可愛がっている後輩の福島章太、松木平優太もいたが、3人がお酒を交えてご飯に行くのは初めて。お酒を飲まない石川昂の合図で、後輩2人が軽快な合いの手を入れてコールをすると、陽気な竹内と岡林がビールやハイボールを流し込んだ。「(竹内)龍臣が投げて、岡林と僕が打って、3人でお立ち台に上がったら……それ想像しただけでやばい」。仲間思いの姿も魅力の一つだ。

 座右の銘は「有言実行」。ひたむきな努力と、誰からも愛される屈託のない笑顔でどんな困難も高い壁も乗り越えてきた。次回のWBCは俺が主役。そんなアーチを、これから何十本も、何百本も見たい。

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