※こちらは公募企画「文春野球フレッシュオールスター2023」に届いた原稿のなかから出場権を獲得したコラムです。おもしろいと思ったら文末のHITボタンを押してください。
【出場者プロフィール】とく 埼玉西武ライオンズ 27歳。
ゆりかごから現在まで埼玉南部で暮らす、超・西武っ子会社員。中学生の時に西武球場前駅で書いてもらったシコースキーのサインは一生の宝物。新潟に思い入れがあり、滝澤夏央タオル片手に今日も球場へ。
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6月末、世はまさに株主総会シーズン。
私の勤務先でも、IR系の部署は日々大忙しであり、そうでない部署も担当範囲の資料作成が大詰めを迎えている。開催日が近づくにつれて社内にピリピリとした雰囲気が漂う中、「この事業の細かい部分についてはこれを見てください」という資料を念入りに作る。
そんな6月某日、あのニュースが目に飛び込んできた。
「西武株主総会 『チームロン毛』に『食事まずくなる』 株主が改善要求」
対象とされた選手達はもちろん、西武HDの担当者にも思いをはせる。そんな質問を想定したQ&Aは流石に用意していないだろう。
「もしも私が株主総会用想定Q&Aの作成担当だったら……」
私は生まれた時から西武線が無いとどこにも出られない郊外に住んでいる。ライフラインである西武グループへの思い入れは狭山丘陵より高く、多摩湖より深い。
そして何より、同い年の髙橋光成のファンである。苦しい時期もあったが着実にステップアップし、昨年は防御率リーグ4位・奪三振数リーグ4位を記録したライオンズのエースだ。光成のピッチングでご飯を食べる手が進む。そして光成はイニングを食い続ける。ロン毛を見て食べる飯の美味しさったら無いのである。
自分がもし西武HDの担当者だったら、どんなQ&Aを作れば、ロン毛を守りステークホルダーを納得させられるだろうか。特に思い入れが深い「ロン毛」、髙橋光成を対象に考えてみた。
IR担当になったつもりで、光成のロン毛に関する想定問答を考えてみた
株主からの想定質問「Q1 髙橋はいつからロン毛なのか」
まず、髙橋はいつからロン毛なのか。基本情報を即答できるようにしたい。
髙橋入団後の紙資料(市販の選手名鑑 及び 埼玉西武ライオンズファンクラブ会員向けオフィシャルハンドブック)・映像(YouTubeのパ・リーグTV公式動画チャンネル等)を頼りに、視覚的に追いかけてみた。(以下、成績やデータは2023年7月1日現在)
【2020年】ロン毛というほどではない
紙資料:耳にややかかっている印象も概ね短髪
映像:襟足は長めであるものの、首が隠れるほどではなくロングというにはやや短い
【2021年】ロン毛の時期もあったが通年ではない
紙資料:耳の後ろにやや伸びているのは分かるが、短髪
映像:(~6月4日)前年よりやや長く、投球時などに上を向くと首が隠れる機会が増加
(6月11日~閉幕)2020年以前の短さにカット。8月頃にやや伸びたものの、6月4日以前ほどまでは伸ばさなかったようだ
【2022年】年間を通してロン毛
紙資料:多くの名鑑では耳の後ろに伸びているのが分かる程度だが、球団ハンドブックの表紙では髪がなびいている
映像:(開幕~9月13日)前年からもう少し長くなり、投球時などに上を向くとユニフォーム背面上部のNPBマークが隠れる機会が増えた
(9月20日・27日)ポニーテール
【2023年】現在までロン毛
紙資料:明らかに前年からさらに伸びており、ロン毛であることは明らか
映像:前年からさらに伸び、背ネームの「K.TAKAHASHI」に毛先がかかっている。ポニテの日も増えた
髙橋のヘアスタイルは「首が隠れるかどうか→背中のNPBマークが隠れるかどうか→背ネームに髪がかかるかどうかorポニーテール」と3段階で進化を遂げた。2019年12月から徐々に伸ばしていたようだが、映像でロン毛の印象が強くなったのは2021年から、年間を通したロン毛は2022年からだった。この間、大きな離脱もなく成績を大幅に向上させると同時に、2022年は無走者時の平均投球間隔が短い投手に贈られる「スピードアップ賞」を受賞。髪は長く試合は短い、「遅延なき定時運行」という鉄道会社にふさわしい姿をプレーで示し続けた。
回答「A1 2021年以降段階的にロン毛にしているが、年間を通したロン毛は2022年からだと言える」